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曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」 ~BAR AUGUSTA TARLOGIE(バー・オーガスタ・ターロギー)~

曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」

酒を楽しみたい・・・。そう思ったとき、人はバーという止まり木を探す。そしてバーテンダーと話をしながら酒なる嗜好品を味わっていくのだ。そんな酒の文化を創り出してきたバーも千差万別。名物のカクテルで勝負している店もあれば、バーテンダーの人柄や店の雰囲気で人を集めているところもある。数ある名物バーを探し、今宵はコレを飲んでみたい。

柔らかなウイスキーと、巨峰のマッチング

大阪府・梅田 BAR AUGUSTA TARLOGIE(バー・オーガスタ・ターロギー)

熟成庫のイメージで造られたバー

 「ロフト」や毎日放送などがある茶屋町(大阪)から少し歩いた所に「BAR AUGUSTA(バー・オーガスタ)」なる一軒の店がある。ここは品野清光さんが1987年に開いたバーだ。

一軒と書いたが、正式には二軒。「バー・オーガスタ」と隣りあって「BAR AUGUSTA TARLOGIE(バー・オーガスタ・ターロギー)」があるのだ。

 「バー・オーガスタ・ターロギー」は、熟成庫のイメージを有しながら造られた店だ。そのためか木の量が全体的に多く、壁には山崎蒸溜所で50年以上使っていた樽材も使われている。

この店はバーにも関わらず禁煙。

だからであろう、できてから12年たった今でも木の香が漂っている。「禁煙にしないと、この木の香りはわからなかったかもしれませんね」と話すのは榊原利生さん。勿論、品野さんの下で働くバーテンダーである。

現在、「バー・オーガスタ・ターロギー」と本店の「バー・オーガスタ」は、品野清光さん、榊原利生さん、中川耀一朗さんの3人のスタッフで回している。

17時から「バー・オーガスタ・ターロギー」の方を開け、そこがいっぱいになった時点で隣りの「バー・オーガスタ」をオープンさせるスタイルをとっているのだ。

 禁煙と書いたが、実はこの店はシガーバーとして2000年にオープンしている。

それが思い切って4年前に禁煙にした。タバコを吸わない人が増えたのも禁煙に踏み切った理由のひとつだが、私が想像するに熟成庫のような所で純粋にお酒を愉しんでもらいたいとの思いもあったのではないだろうか。

禁煙にすると、いらぬ煙が立たないためであろう、フルーツをカットした時には、その香りが伝わってくる。さらにグラスに入ったウイスキーの香りも何となくであるが、際立ったような気すらする。

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 前述したように「バー・オーガスタ」は、品野さんが今から25年前に開いている。大阪では有名な一軒で、私の友人などもよくここを根城にしているようだ。

「バー・オーガスタ・ターロギー」のカウンター隅には読み古された本が置かれている。よく見れば、私が「あまから手帖」に在籍していた時に作ったものだ。今では有名になった切り絵作家・成田一徹さんの処女作品集で、バーの風景を成田さん流のタッチで描いていたもの。そういえば、この成田一徹の「酒場だより」にも「バー・オーガスタ」が載っていた。それにこの本の巻末には山崎蒸溜所と「山崎」を切り絵で表現したものが――。
成田一徹さんを山崎蒸溜所まで連れて行き、当時、編集長だった重森守さんに文を書かせた。バーの本の最終ページには、日本のウイスキーの聖地ともいうべき山崎蒸溜所がふさわしいと私が考えた企画である。

 普段は品野さんがこのカウンターに立っているのだが、榊原さんの話では今日は留守だとか。だから榊原さんが私の相手をしてくれている。
榊原さんはかつて北野町(神戸)のバーで働いていたそうだ。24歳の時にウイスキーにはまったのが、この道へ就いたきっかけ。ストレートを出した時にある客が「ウイスキーはバーテンダーが造るものではない」と言ったとか。その言葉がきっかけで、ウイスキーを深く知りたいと思ったそうだ。

「ウイスキーのストレートって、注ぐ人によって味が違うと思いませんか?科学的にみると、同じはずなんですが、飲んでみると違うんですよね。そんな事を考えているうちにこの世界へはまってしまいました」
榊原さんは、神戸の店を辞した後、スコットランドへ行き、1ヵ月かけて蒸溜所を巡った。ボウモア蒸溜所で、ある職人から「私達はウイスキーを造っているものの、直接、お客様に提供する機会がない」と言われたのが印象に残った。彼らは飲んでいるシーンをそんなに見ることはない。やはりアンカーはバーテンダーなのだと実感したらしい。

 スコットランドから戻り、すぐに「バー・オーガスタ」でバーテンダーとして第2ラウンドをスタートさせている。「品野さんは、こよなくウイスキーを愛している人。だから勉強になるんです」と話す。
ある人から「スコットランドへ行って帰ってきたら『バー・オーガスタ』で働くのが一番いい」と言われたらしい。働いて数年でその言葉が実感できたのだろう、榊原さんは「ウイスキーがあったからこそ、品野さんと出逢えた」と話していた。

バランスのいい「山崎」にプラスαが加わった

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 壁に山崎蒸溜所にあった樽材が使われていると榊原さんから聞いたからか、無性に「山崎」が飲みたくなってしまった。

「最近、新しい『山崎』が出ましたよね」と話を振ると、榊原さんがそのボトルを取り出してくれた。
白いラベルには"THE YAMAZAKI SINGLE MALT WHISKY"とあり、その横に漢字で"山崎"の文字が記されている。5月29日に発売された新「山崎」は、「山崎」ブランドとしては16年ぶりの通年型商品だ。
山崎蒸溜所が持つ多彩な原酒の中から、ブレンダーが理想のモルトを選び抜き、生まれたシングルモルトである。「山崎」の伝統であるミズナラ樽貯蔵モルトと、ワイン樽貯蔵のモルトを合わせて生まれたもの。まさに伝統と革新が重なり合った味といえよう。

 「新しい『山崎』は、ワイン樽が利いているんですよ」と榊原さんは説明する。榊原さんの話では、ワイン樽に貯蔵していたために葡萄から来る甘さが印象的なのだとか。バランスのいい味が定評だった「山崎」にプラスαが加わり、飲みやすくなったようだ。

「一層フルーティになった感がありますね。柔らかく華やかな香りと、甘くなめらかな味は女性にはピッタリかも。すっきり感があるのでハイボールで飲むのもいいのではないでしょうか」。そう言いながら私にハイボールを薦めるのかと思いきや、榊原さんは「カクテルでもいかがでしょうか?」と言ってきた。初めはハイボールでもと考えていたのだが、何か面白そうなものが出てきそうだと思って注文すると、早速、新「山崎」を使った「新山崎巨峰トニック」を作り始めた。

 「新山崎巨峰トニック」とは、新しい「山崎」の発売に際し、榊原さんが考案したものだ。巨峰が出る時季だったこともあって葡萄と新「山崎」をうまく合わせたのだという。

 作り方は、まずグラスに巨峰を4つ入れ、その上から新「山崎」30mlを注ぎ入れる。それからすり粉木で中の巨峰を軽くつぶし、氷を加えてからトニックウォーターを90ml注ぐ。そして巨峰をカクテルピンに刺し、グラスの上に載せて提供する。榊原さんはこれを「食べながら飲むカクテル」と紹介する。軽くつぶすことで、巨峰に新「山崎」の味が染み込み美味しくなるらしい。

「うちではウオッカトニックの評判がいいんですよ。いわばこれはその『山崎』バージョン。『白州』がハイボールの時にミントを添えるのを参考にして考えたんです」と説明する。

今回の新しい「山崎」は、ワイン樽貯蔵のものを使っている。だから巨峰を用いたのであろう。榊原さんが言うように新「山崎」の味も加わって巨峰自体も美味しい。こう書いてしまうと、葡萄の味が勝っているように思われがちだが、「山崎」の味もしっかり残っている。

「苦みが出たり、バランスが壊れたりするのを考慮してウイスキーにはトニックを使わない人が多いんですよ。でも『ラフロイグ』はトニックで割ると旨いというお客様が多いんですよ。トニック自体の甘みがうまく合わさって味がまとまるんでしょうね」と榊原さんは言う。そしてさらに「ウイスキーの入門者にはソーダよりもトニックの方がいいかもしれませんね」と付け加えた。

フレッシュな巨峰の味といい、炭酸がはじけた味といい、蒸し暑いこの時期にはピッタリの飲み物だ。榊原さんの言うようにハイボールで入ってきた若い世代にはウケそうである。

「若い原酒も入っているのか、非常に柔らかく飲みやすいですね。それにワイン樽の特徴がうまく生かされています。きっと若い世代にはウケると思いますよ」と榊原さんが新「山崎」の感想を述べていた。

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 ところで榊原さんは、四季折々に山崎蒸溜所を訪れるそうだ。

「一度も行ったことがない人は、こんなに街の近くに素晴らしい蒸溜所があるなんて想像もつかないでしょうね。交通の便利さもさることながらウイスキーを造る環境が実にいいんですよね。行くと、『山崎』の良さが理解できますよ」と言う。

「実はね、今年の初めに行った時に『山崎50年』を飲んだんですよ。ミズナラ樽の特徴とトロピカルフルーツのような味がうまく融合したとでも表現しましょうか。トロピカルフルーツ系の味と言いましたが、それがすごく熟成したものを足したような味だったんです。聞けば、創業当時のウイスキーが入っているとかで、高くてもまさに飲む価値あり!でしたね」。

 「スコッチに負けない日本のウイスキーを造りたい」との夢に突き動かされ、鳥井信治郎が山崎の地でウイスキー造りに取りかかってからすでに90年ほどの歳月が過ぎた。その間、ジャパニーズウイスキーは確実に進化してきた。

5月29日に発売された新しい「山崎」がその伝統をうまく受け継ぎ次代へウイスキー文化を伝えることができたら...。

そんな事をちょっぴり考えつつ、「新山崎巨峰トニック」を味わった。

BAR AUGUSTA TARLOGIE(バー・オーガスタ・ターロギー)

お店情報

住所大阪市北区鶴野町2-3 アラカワビル1F

TEL06-6376-3455

営業時間17:00~24:00

定休日なし

メニュー
  • 新山崎1100円
  • 新白州1100円
  • 山崎12年1200円
  • 白州12年1200円
  • ボウモア12年1200円
  • ラフロイグ10年1200円
  • ジントニック1000円
  • シーサイドサイドカー1800円

  • ※チャージ700円
    ※料金は全て税別
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