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曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」 ~Bar ぽりす~

曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」

酒を楽しみたい・・・。そう思ったとき、人はバーという止まり木を探す。そしてバーテンダーと話をしながら酒なる嗜好品を味わっていくのだ。そんな酒の文化を創り出してきたバーも千差万別。名物のカクテルで勝負している店もあれば、バーテンダーの人柄や店の雰囲気で人を集めているところもある。数ある名物バーを探し、今宵はコレを飲んでみたい。

ドミニカの味を、堺で実感する!

大阪府・堺 Bar ぽりす

セクシーな作り方をするモヒート

 かつてこのコーナーで堺のバーのことを書いた時に(当時はタイトルが「BARのトレンドを読み解く」であった)、「BAR 中原」のことを"堺のイメージではない(?!)大人のバー"と表現した。バーを取材するようになって堺に行くことが多くなった。そこで出会った中原淳史さん(BAR中原)や藤川勝浩さん(アッセンブル・オン・エイト)らの技術を見るにつけ、堺のバーはあなどれないと思うようになった。だから"堺らしからぬ"という言葉を撤回したい。そう、堺のバーはかなりハイレベルなのだ!

 今回もそんなハイレベルな一軒に飲みに行くことにした。場所は南海堺東駅のひとつ向こうの三国ケ丘である。カクテルが旨いと評判を取る「Bar ぽりす」は、南海(高野線)とJR(阪和線)が隣接する三国ケ丘駅の近くに位置している。三国ケ丘駅北口から出てロータリー沿いに進む。大阪信金や王将のある角を折れ、中環道路の方へ歩くと、「Bar ぽりす」がある。店主の中尾真人さんに聞くと、"ぽりす"とは、アクアポリスやミネアポリスの時に使う"独立都市"という意味らしい。前オーナーがつけた名前だが、7年前に中尾さんが店を引き継いでからも変えることもなく今日に至っている。

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 中尾さんは、モヒートにかなりのこだわりを持っている。モヒートは、ハバナ(キューバ)が発祥のラムベースのカクテルである。そのルーツには諸説あるようだが、確かアーネスト・ヘミングウェイが愛したことでも知られていたと思う。このモヒートが3年ぐらい前に日本で爆発的に流行した。当時はどこのバーへ行っても必ず誰かがそれを飲んでいた。そんなブームのかかりだったのか、中尾さんは"本物のモヒート"が作りたいと考えた。どこかでそれを飲めないかと探していた時、常連客から「ベッソ」の佐藤章喜さんの話を聞いたようだ。「初めて『ベッソ』に行った時に佐藤さんの作ったモヒートを飲んで衝撃を受けました」と中尾さんは振り返る。「これだけの量のラムが入っているのにアルコール度数を感じない。それにミントの堅さも違う。潰した時の反動があってミント自体が生きているように思われたんですよ」と話す。

  若手バーテンダーの育成に余念がない佐藤章喜さんは、弟子でもない他店のバーテンダー(中尾さん)にその作り方を教えたのだから頭が下がる。カクテル名人・佐藤さんの作るモヒートを見て、中尾さんはシロップを独自に選ぶことで、自分なりのモヒートができるのではないかとの結論に達する。そしていつの日か、「堺でモヒートを飲むなら『Bar ぽりす』に行くべし」と言われるようになりたいと思い、切磋琢磨し始めた。こうしてできたのが中尾さんらしさが詰まったモヒートである。

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 この日、中尾さんが私の一杯目として作ってくれたのが「モヒートルホ」なるもの。「Bar ぽりす」では、最近、ベースとなるラムを変えている。それが10月23日に日本に初上陸した「ブルガル」だ。ドミニカ共和国のラム産業のパイオニアとしてスタートした「ブルガル」は、今やカリブ海エリアでは売上NO.1を誇るラム酒のブランド。伝統的な製法を守りながらも時代に合わせて革新的変化を遂げているラムである。

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 中尾さんは、まずシェイカーの中に1/4にカットしたフレッシュライムを入れ、ペストルで潰すことから『モヒートルホ』づくりを始めた。そして潰し終わったライムを捨てる。これは「ブルガル」が他社のラムよりまろやかだと考えるからあえて行うのだそう。「ライムジュースでもいいのでしょうが、ライムの持つエグみのようなものを出したいんですよ。皮ごと潰すことでエグみや脂分が残せます。でも、それを入れたままシェイクすると苦味が出すぎるんですよね。だから潰したら捨ててしまうんです」と説明してくれた。

 そのライムの果汁の中に惜しげもなくフレッシュスペアミントを入れ、再びペストルで潰していく。中尾さんによると、これは香りと色を出すためのもの。力をこめることでミントの緑色をライム果汁に移していく。そして「ブルガルブランコ」90mlを注ぎ、ドライシェイクする。氷を入れてしまうと、40度のラムが薄まってしまうために、あえてドライシェイクをするのだという。

 このようにしてできた自家製ミントフレーバーラムを漉してミキシンググラスに入れる。「モヒートは70~80mlのラムが必要だと思っているんです。シェイクする前に『ブルガルブランコ』を90ml入れたんですが、シェイカーの周りについたり、ミントに含んだりしてしまっているので、この時点では80mlぐらいになっているんですよ」と中尾さんは解説を加える。ミキシンググラスに自家製ミントフレーバーラムを注いだら、後は3つのシロップを加えていく。この3つとは、①マルティニック島の黒糖シロップ(2ティースプーン)②自家製ライムシロップ(1ティースプーン)③市販のものをミキサーにかけてパウダー状にした粗目糖(1ティースプーン)である。これらを加えたらゆるめにステアをする。

 タンブラーにミントをふんだんに入れて香りが出る程度に軽く潰したら、ミキシンググラスから注ぎ入れ、少しステアを。そして氷を入れて、ソーダを約135ml注ぐ。さらに「ブルガル1888」を15mlぐらいフロートし、ミントを飾って出来上がる。

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 カクテル名の「ルホ」とは、スペイン語で贅沢なとの意味らしい。「ブルガルブランコ」をベースにモヒートを作っておきながら、さらにスーパープレミアムラム(ブルガル1888のこと)をフロートするので、「ルホ」というネーミングがついている。中尾さんは「高いラム酒をフロートするんで、セクシーな作り方をしているでしょ」と言いながらこれを提供してくれた。性的魅力があるとの意味ではない。「ブルガルブランコ」だけでも十分なのに「ブルガル1888」がさらに加わっているので中尾さん曰く、セクシーなのだそう。この中尾さん独特の表現に、少し笑ってしまった。

 「モヒートルホ」をまず初めにストローで吸う。すると、「ブルガルブランコ」が味わえる。次にグラスから直接飲むと、プレミアムラム酒である「ブルガル1888」の味が実感できる。そんな違いを楽しみながらも飲んでいくうち半分量ぐらいになってくると、「ブランコ」と「1888」が混ざり合ったモヒートの味が楽しめるようになる。この3つの楽しみ方ができるのも「モヒートルホ」の特徴。カクテル自体はかなり飲みやすいので女性にもウケそうだ。軽めのイメージが強い「ブルガル」を使っているから余計にそう感じるのかもしれない。

二杯目はコーヒーとチョコレートの共演を

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 堺出身のバーテンダー・中尾真人さんは、20歳の頃、トラックの運転手をしていたらしい。早くお金を貯めたいと思い、昼の仕事にプラスして、夜、バーでアルバイトをすることにしたそうだ。流石に二足のわらじは、身体に負担をきたした。ついに過労で入院した。退院後、トラックの会社を辞している。なぜ本業を捨てたのかといえば、お母さんの一言がきっかけ。「あなたはトラックの話はしないが、バーの話はいつもしている」と言われたことにより、好きな仕事で喰っていこうとバーテンダーの道を選んだ。

 当時、「Bar ぽりす」でバーテンダーとして働いていたのが師と尊ぐ松下さん。かつて「リーガロイヤルホテル堺」(現ホテル・アゴーラリージェンシー堺)でシェイカーを振っていた人物である。ある日、松下さんに「ロックグラスでかっこよく飲めるものを作ってください」と注文した。その時、作ってくれたのが「神風」。それを飲んだ時に中尾さんは「別のバーで飲んだ『神風』とは全然味が違っていた。同じカクテルでも作る人が異なれば、かくも美味しくなるものか」と実感したそうだ。そして松下さんの実力を肌で感じたのだという。

 そんな松下さんが辞めてから「Bar ぽりす」のカウンターを中尾さんは守っている。NBAにも属さず、一匹狼的存在だと話すが、凄いと噂を聞けば、そのバーまで出かけて教えを請う。色んな人に出会うことで技術を高めている。ここまでいけば"我流"なんて言葉では言い表せない。まさに研究熱心が生んだ賜物なのだ。

 そんな中尾さんが「ブルガル」つながりで二杯目を作ってくれた。

スーパープレミアムラム「ブルガル1888」をベースにしたカクテルで、その名も「カリビアンコーヒー」。ドミニカ生まれのラム酒が利いたホットカクテルである。

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 この「カリビアンコーヒー」は、温めたグラスに「ブルガル1888」を45ml注いで作る。そしてライターでグラス内に火をつけ、アルコールを飛ばしながら軽く温める。次に温かいコーヒー(200ml)を注ぎ入れ、軽くステア。軽くホイップした生クリームをその上から加え、コーヒー豆をミキサーで粉末状にしたものを振りかける。

 このカクテルは、ブラックコーヒーのイメージ。だから糖分は加わっていない。甘みが欲しければ、添えられた生チョコレートを味わう。しかもこのチョコレートは、「ブルガル1888」で作ったというから実にいいカップリングだ。初めに「ブルガル1888」の利いたコーヒーを味わい、砂糖代わりのチョコレートを口に含む。想像以上に柔らかいチョコレートは、口内に甘みを伝えるとともに、ホットカクテルと交わりながら新たな味へと変化していく。そんな変化が実に面白い。

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 中尾さんは「バーで飲むカクテルは9割がバーテンダーが作り、あとの1割をお客様自身が作るのがいい」との自論を持っている。その1割がこの口内の交わりであり、先ほどの「モヒートルホ」の飲み方の違いによる3つの味の変化だ。

 「先日、ある割烹で、ジャパニーズハイボールを作ろうと思って、本ワサビを使ったものを料理長に伝授したんですよ。それは『白州』のハイボールに刻んだ大葉を載せ、本ワサビを少しだけ加えたものです。鼻から抜ける大葉の香りや、残り香の本ワサビが印象的で、実に日本料理にフィットしたハイボールになったと喜ばれました」。こんな話を中尾さんは、次々としてくる。その話の面白さにこちらもつい引き込まれてしまう。二杯目の「カリビアンコーヒー」は、すでになくなっている。さて、次は何を飲ませてくれるのだろう。こんな思いをするのだから「Bar ぽりす」は、素敵な店である。再度言うが、堺のバーをあなどるなかれ。恐るべき技術を持つバーテンダーがこんな小さな街にもいる。

Bar ぽりす

お店情報

住所大阪府堺市向陵中町2-3-13 ハイキャッスルビル2F

TEL072-240-9191

営業時間19:00~翌2:00

定休日月曜日

メニュー
                        
  • モヒートルホ1500円
  •                     
  • カリビアンコーヒー1200円
  •                     
  • モヒート1300円
  •                     
  • 自家製モスコミュール1200円
  •                     
  • レディグレイのジントニック1000円
                        
  • 山崎シェリーカスク1500円
  •                     
  • 山崎12年1200円
  •                     
  • グレンフィディック12年1200円
  •                     
  • 白州10年のハイボール900円
  •                     
  • チャージ500円
↓ブルガルの製品情報はこちらから↓
http://bartendersclub.suntory.co.jp/brand/2012/10/index.html
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