BAR業態様 限定

曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」 ~BAR PLUS L(バー・プラス・エル)~

曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」

酒を楽しみたい・・・。そう思ったとき、人はバーという止まり木を探す。そしてバーテンダーと話をしながら酒なる嗜好品を味わっていくのだ。そんな酒の文化を創り出してきたバーも千差万別。名物のカクテルで勝負している店もあれば、バーテンダーの人柄や店の雰囲気で人を集めているところもある。数ある名物バーを探し、今宵はコレを飲んでみたい。

優等生ブレンデッドウイスキーが、古典的カクテルになる理由(わけ)

大阪府・天満橋 BAR PLUS L(バー・プラス・エル)

11の「L」をコンセプトにしたバー

PLUSL_エ.jpg

  帝国ホテル大阪の近所に気になるバーがあった。

店名を「BAR PLUS L(バー・プラス・エル)」といい、南から行くと天満橋1丁目の交差点の一つ手前、大阪アニメーションスクール専門学校がある角を右折してまっすぐ行った所に位置している。聞けばこのバーをやっているのは、元帝国ホテル大阪のバーテンダーだった渡部聡さんで、4年ほど前の2009年7月11日にオープンしたとのこと。店に入ると、カウンターとボックスが左右に配置されており、奥が全面ガラス張りになっている。

バーはとかく閉ざされた空間が多いのだが、この店は外から中の様子が見えるために女性でも入りやすい。渡部さんに聞くと、「外から女性が腰かけている姿が見えるから安心するのでしょう」と言う。

この辺りは大阪の街中から少しはずれている。南森町からも歩いて行ける距離だが、マンション群もあり、街と住宅地が混在しているような感じがする。そのため「バー・プラス・エル」では、夫婦連れで訪れる人も多いらしい。

 店主の渡部さんは、4年前に退職するまで帝国ホテル一筋で働いて来た人。学生時代に神戸の某ホテルにてアルバイトしたことがきっかけで酒の世界に興味を持ち、卒業後、東京の帝国ホテルに入社した。当時は映画「カクテル」がヒットしていたこともあってバーテンダーを希望する人が多かったそうだ。入社一年目はルームサービスの仕事をしていたものの、たっての希望で難関のバーへ異動を。「レインボーラウンジ」で4年働いた後に、帝国ホテルが大阪に進出したので、オープンスタッフとして大阪の「オールドインペリアルバー」にやって来ている。帝国ホテル大阪では、バーテンダーとして腕をふるった後、バーやロビーラウンジなど5つの店を任される支配人にまでなっている。

渡部さんに独立した動機を尋ねると、「管理職になってしまい、現場(バー)に立たなくなったのが寂しく感じた」のだそう。

長年勤務したホテルを辞すことを決意し、物件を探していたらたまたま気になっていたこの店が空き物件になっており、店舗募集していた。「ここは以前はダイニングのような形の飲食店だったんですが、その時に食事に来たことがあって、『いい店だなぁ』って思っていたんです。それが空き物件になっていたんで、思わずここでバーを始めようと思いました」と話してくれた。

PLUSL_オ.jpg PLUSL_ノ.jpg
PLUSL_カ.jpg

 「バー・プラス・エル」のコンセプトは、店名に記されている「L」である。

このアルファベットには、人生(Life)、自由(Liberty)、くつろぎ(Living)、酒(Liquor)、会話(Language)、贅沢(Luxury)、愛(Love)、笑い(Laugh)、幸運(Luck)など11の「L」の意味が込められている。だからオープン告知ハガキには"お客様の人生に少しでもプラスになれるよう、自由にくつろげる空間でお酒と会話を通じて贅沢なひと時を演出し、愛と笑いにあふれたお客様を幸運へと導ける(Lead)都会の中の灯り(Light)のような場所でありたい"と書いている。このコピーが示すように同店は肩肘張るような重厚なバーではない。どちらかというと、バー初心者でも気軽に入店できる窓口的に店になりたいと考えている。そのためにもガラス張りの内装が必要だったのであろう。渡部さんは帝国ホテル大阪を辞してまもなくの7月11日に店を開いている。「7を逆さにするとLになるでしょ。それにセブンイレブンと覚えやすいし、まさに"いい気分"になれるバーを目指したいですね」と洒落っ気たっぷりである。

古典的カクテルに限定発売のウイスキーを用いてみる

PLUSL_ク.jpg

 私はこの居心地のいいバーのカウンター席に早い時間から陣取って「バランタイン17年ミルトンダフエディション」を飲んでいる。このブレンデッドウイスキーは、あの「バランタイン」から今年8月20日に限定発売されたもの。キーモルトのひとつである「ミルトンダフ」の香りや味わいを際立たせてブレンドしたウイスキーだ。ストレートで飲ると、ピーチやオレンジの甘い香りが漂い、スムースな味わいの中にもかすかなミルクチョコレートとシナモン、グローブなどのスパイス感がある。昨年発売された「バランタイン17年スキャパエディション」とは正反対で、ずしりとした重みがあるのが個性といえよう。

 私が限定発売されたこのウイスキーの名を告げると、意外にも渡部さんは「カクテルにしましょうか」と言ってきた。普段ならロックか、ストレートを薦めるらしいが、私が「これを飲んだことがある」と言ったので、あえて変化球を投じてくれたのだろう。「オールドファッションの『ミルトンダフエディション』版です」と前置きした上で、早速、渡部さんはカクテルづくりに取りかかってくれた。

まず角砂糖1個にアンゴスチュラビターを垂らし、グラスに入れる。砂糖を溶けやすくするためにソーダを少し(10mlあるかないかぐらい)垂らす。そうすると、ジュワッという音とともに砂糖が少しずつ溶けていくのがわかる。

次にグラスにレモンスライス、オレンジスライス、カットしたパイナップル、マラスキーノチェリーを入れ、クラックアイスを加えていく。小さめの氷にしたのは、後からマッシャーで潰す作業を行いながら飲んでいくから。クラッシュアイスだと、すぐに溶けて水っぽくなりすぎるので、キューブとクラッシュアイスの中間ぐらいのクラックアイスにしているそうである。

氷がある程度入ったら、「バランタイン17年ミルトンダフエディション」45mlを注いで完成する。

前述したようにグラスの横にはマッシャーが添えられている。初めに何もせずそのまま飲んでウイスキーの味を堪能し、その後で果実をマッシャーで潰しながら飲んでいく。

 一口目は、まろやかだが、重厚な「ミルトンダフエディション」の味が舌に残る。そして果実を潰してさらに飲んでみる。すると、味に深みが加わったように感じる。フルーツの味がうまくミックスされ、実に飲みやすい。これなら普段ウイスキーを飲み慣れていない人でも十分美味しく感じるだろう。果実の味が勝っているかといえば、そうでもなく、「ミルトンダフエディション」の特徴的な味わいはうまく残っている。

 「このウイスキーは、オレンジの香りがするでしょ。だからレモンスライスやオレンジスライスが入る『オールドファッション』に合うのじゃないかと思いまして...」と渡部さんは説明してくれた。渡部さんの話では、「オールドファッション」は、古典的なカクテルで、ライウイスキーやバーボンウイスキーで作るのが一般的だとか。クセのないライウイスキーと、バーボンウイスキーでは少々味に違いが生じるそうだが、後者は独特のクセがあるものの、フルーツとは相性がいい。そのことから考えると「ミルトンダフエディション」でも美味しいカクテルになるのではと、渡部さんは思ったようだ。

PLUSL_ケ.jpg PLUSL_セ.jpg PLUSL_タ.jpg PLUSL_ツ.jpg
PLUSL_ト.jpg

 「ザ・スコッチの異名を取る『バランタイン17年』の中でも『ミルトンダフ』は、中心的役割果たすモルト。初心者は華やかな香りを有す『スキャパエディション』の方がいいかもしれませんが、ウイスキー上級者やシングルモルト好きには『ミルトンダフエディション』の方が気に入るのではないでしょうか。今回のように『オールドファッション』に用い、果実を潰しながら飲むと、味に広がりが出ます。ストレートなら重く感じても、こうすることで軽く飲めるはずですよ」。ソーダは少し垂らした程度で、果実が入っているとはいえ、ほとんどストレートと変わらないこのカクテルが、不思議と軽く感じられる。

「ウイスキーを飲めない人が飲んで美味しく思えるようにした」との渡部さんの言葉が実によく理解できる。「このカクテルのアレンジ方法は?」と突っ込んで質問すると、「オレンジとレモンはあった方がいいですが、他は季節のフルーツを用いてもいいでしょうね。『ミルトンダフエディション』は、シナモンの味がするので、マッシャーをシナモンスティックに代えてもいいでしょうね」と言っていた。

 「バー・プラス・エル」には「ラフロイグ」が、かなり並んでいる。「10年」や「18年」「クウォーターカスク」は勿論のこと、「QAカスク」や「ヴィンテージ1987」・「1989」、「40年」、「ハイグローブ」など珍しいボトルもある。これは渡部さんが店を始める時に窓口的な店にしたいと思ったと同時に、何かに特化しようと考えたから。その答えとして導き出されたのが自身も好きな「ラフロイグ」だった。

この蒸溜所にロバート・フィックスが来てから荒々しい味が特徴的になったとの感想を持つ。「バランタイン」も昔と今とでは味に違いが生じているが、しいていえばこの「ミルトンダフエディション」は昔の味に似ているそうだ。「バランタインとラフロイグは正反対の味ですが、ともに好きな酒ですね。優等生的な味だから誰にでも薦めやすく、ウイスキーを好きになってもらえるきっかけになると思います」と言う。

きちんとしたオーセンティックバーにも関わらず、窓口的要素を打ち出しているからか、なぜか入りやすい「バー・プラス・エル」。この店で「バランタイン」を飲み、ウイスキーの世界に興味を持つ人が増えていく。そうなっていくことをウイスキーファンは願っている。

PLUSL_ネ.jpg

●BAR PLUS L(バー・プラス・エル)

お店情報

住所大阪市北区天満橋1-6-1 アフィット天満橋1F

TEL06-6354-1599

営業時間18:00~翌2:00

定休日月曜日

メニュー
  • バランタイン17年ミルトンダフエディションのオールドファッション1500円
  • バランタイン17年ミルトンダフエディション(45ml)1500円
  • オールドファッション(一般的なもの)1000円
  • ジントニック900円
  • マティーニ1000円
  • フルーツを使ったカクテル1000円~
  • バランタイン17年1500円
  • ラフロイグ10年900円
  • ラフロイグ18年1800円
  • ラフロイグクウォーターカスク900円
  • 山崎12年1100円
  • 白州12年1100円
  • ジムビーム ブラックラベル700円
このページの先頭に戻る