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曽我和弘のBAR探訪記「噂のバーと、気になる一杯」 ~BAR ASHIBE(バー・アシベ)~

曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」

酒を楽しみたい・・・。そう思ったとき、人はバーという止まり木を探す。そしてバーテンダーと話をしながら酒なる嗜好品を味わっていくのだ。そんな酒の文化を創り出してきたバーも千差万別。名物のカクテルで勝負している店もあれば、バーテンダーの人柄や店の雰囲気で人を集めているところもある。数ある名物バーを探し、今宵はコレを飲んでみたい。

嫌な長雨を、この爽快感で忘れたい

神戸・三宮 BAR ASHIBE(バー・アシベ)

女性バーテンダーとフルーツの関係

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今夏は長雨のせいか、街に蒸し暑さが充満している。気温がそんなに高くない日でも暑くてたまらない。こんな日は爽快感を求めたいと、思わず三宮のバーへ飛び込んだ。私が入ったバーは、生田神社より一本西の筋、「ホテルモントレー」の裏辺りにある。聞けば、阪神淡路大震災の後にここへ移ってきたというからすでに20年近くになる。カジュアルなイメージを持つ「BAR ASHIBE(バー・アシベ)」は、川田篤生さんが29年前にオープンさせた店である。当初は「神戸サウナ」の南側にあったそうだが、震災で被害を受けたのだろう、その後、この場所へ移って来た。川田さんは、昨年の1月ぐらいまでこの店のカウンターに立っていた。友人から「沖縄で出店しないか」との誘いがあり、それに乗る形でイタリアンの店をオープンしたのだ。以後は沖縄をフィールドにしているらしく、今は弟子の明石美奈子さんが「バー・アシベ」を任されている。

近年、女性バーテンダーが多くなったように思う。ガールズバーではなく、オーセンティックバーでも女性ばかりでやっている店もあり、カクテルコンテストでも彼女らの作品が賑わしているようだ。明石さんもそんな女性バーテンダーのひとり。以前はレストランのサービススタッフの仕事をしていたようで、誰か(シェフ)が作ったものを注文した所へ運ぶという単調な仕事に飽きてしまい、バーテンダーの道へ進んだ。バーテンダーという仕事は、サービススタッフだけではなく、作り手でもある。そして出した酒をダイレクトに評価を受ける立ち位置にもある。そんな仕事が楽しいのだと話していた。カウンターでは接客は、入りすぎてはいけないが、入らなくてもダメだ。特に町場のバーでは親近感も要求される。その微妙な距離感の取り方にプロのコツがあるのだという。明石さんがこの店に入った頃は、ちょうど同い年のパティシエが客として通って来ていて、カウンター越しにスイーツの話をよくしたそうだ。パティシエの話を聞いているうちに、ふと頭に浮かんで来たものがある。それはケーキもカクテルもフルーツを使う点では同じだということ。ケーキではこんな組み合わせの妙があるが、カクテルではそれが生きるだろうかなどと色々試しているうちに腕が上がっていった。なので明石さんは、今でも旬の果物を使ってカクテルをよく作る。先月はトマトとバジルを使ったものを創作した。それにマンゴーやドラゴンフルーツ、パッションフルーツ、イチジクなども創作することも多い。かつてパティシエと情報を共有した経験は、今でもこのバーで活かされている。そんな明石さんも「バー・アシベ」のカウンターに立つようになって14年にもなる。今や押しも押されもせぬ、女性バーテンダーだ。神戸を代表する女性バーテンダーと言っても過言ではないだろう。

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グレープフルーツを掻き出しながら飲む「モヒート」

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爽快感を求めて「バー・アシベ」に入った私は、ミントを使った一杯を注文することにした。この時季は、私のような注文が多いのだろう、明石さんの話では「ミントジュレップ」や「モヒート」がよく出るそうだ。ミントはご存知の通り、シソ科ハッカ属のハーブである。その名はギリシア神話に出てくるニンフのメンテーから取っている。ミントを和名にすると‟薄荷"となる。漢字で書くと、小難しいが、読み方はハッカだ。口に入れると、スーッとする爽快感があるために夏向きのカクテル素材に用いられることが多い。

「ミントを使って...」と言ったものだから明石さんは、ご自慢の「モヒート」を作ってくれようとしている。「モヒート」は16世紀後半に海賊・フランシス・ドレークの部下だったリチャード・ドレイクが「ドラケ」をキューバ人に伝えたのが始まりだとの説がある。その「ドラケ」が19世紀後半に「モヒート」に変化した。本来はラムをベースにするのだが、明石さんは、「メーカーズマーク」でそれを作ってくれるそうだ。参考までにその作り方を記すと、まず、グラスに砂糖(1ティースプーン)とフレッシュなライム1/2を搾った果汁を、30mlになるように入れる。そして果汁で砂糖を溶かしていく。次にグレープフルーツ1/4個分を小さくカットしたものを加え、ミントの葉を多めに入れるのだ。ミントが入ったらグレープフルーツの食感が残るぐらいに軽く潰し、クラッシュアイスを入れてステア。「メーカーズマーク」30mlをそこへ注ぎ入れ、さらにクラッシュアイスを加えてもう一度軽くステアする。トニックウォーター適量を注ぎ、軽くステアしてから叩いたミントの葉を乗せれば出来上がる。

明石さんが作った「モヒート」は、ミントも多く、ライムも多めに使っているので、すっきりした感じが強い。今日のような蒸し暑い日にはピッタリだと思う。程よい酸味が喉に潤いを感じさせ、ゴクゴク飲んでしまいそうだ。グラスの中には小さくカットしたグレープフルーツがあり、それをスプーンで掻き出して食していく。すると、グレープフルーツの酸味も加わり、口内はよりさっぱりしていく。「本来ならラム酒で作るんですが、今日は『メーカーズマーク』にしてみました。このバーボンは、クセがないから代用しやすいんですよ。私はコレをロックで飲るのが好きなんですが、このようにカクテルにしてもその良さを十分発揮してくれます」と話している。「バー・アシベ」は、わりと「メーカーズマーク」を薦めているそうだ。ハウスウイスキーとまではいかないが、この酒を嗜好する客が多いので数多く仕入れているとの話であった。

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「昨夏、この店で『メーカーズマーク』の封蝋体験をやったんです。神戸のバーテンダーさん達に集まってもらい、ウイスキーの講習会を兼ねて行ったんですが、それが楽しくて...」と少女のように微笑みながら話していた。そして彼女が封蝋したという「メーカーズマーク」を見せてもらった。赤い蝋が瓶の口とお尻についており、個性的な輝きを放っている。何を隠そう私も今春、サントリー本社でそれを体験したのだが、私のは当たり前のように瓶の口部分だけの封蝋。それに比べて明石さんのは底の部分にも赤い蝋がある。「あっ、そんな手があったんだ!」と思わず言ってしまったが、時は戻って来ない。私と明石さんの世界に一本しかない「メーカーズマーク」は、確実に差があった。

「バー・アシベ」は、「ホテルモントレー」の裏辺りにあると書いたが、厳密にいえば西側の筋で、北西角の対面にあたる。1階店舗で、扉にもガラス部分が広く取ってあるので入りやすい。私は以前、何度もこの前を通り、バーがあるのがわかっていたのだが、なぜか通り過ぎていた。今日初めて入ってみて、なぜ、これまで入らなかったのだろうと後悔した。店内は広い。酒だけかと思いきや、フードも充実している。川田さんが沖縄で店をやっていることから、この月は沖縄フェアを開催しており、明石さんによれば、いつもより泡盛などが多く置いているとのことだった。ちなみにフードは、「マルゲリータ」や「ペペロンチーノ」「カルボナーラ」「ナポリタン」など。ピザ・パスタが充実しており、店名を冠した「ASHIBEピザ」は、ホワイトソースがかかっていて上にカマンベールチーズが乗っている。フードが揃っているからか、このバーでは一軒目づかいも多いようで、食事をしながらワイワイと飲る人もいる。まさにカジュアル感覚で、使い勝手のいい店といえるだろう。今日は「モヒート」で喉を潤したが、次回は食べながら、飲みながらといった楽しみ方をしてみたい。そんな風に思わせてくれる一軒であった。

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BAR ASHIBE(バー・アシベ)

お店情報

住所神戸市中央区下山手通2-12-21 ソシアルビル1F

TEL078-391-2039

営業時間月~土 18:00~翌5:00/日 18:00~翌3:00

定休日無休

メニュー
  • モヒート1000円
  • ジントニック800円
  • グラスホッパー900円
  • ミントジュレップ1000円
  • メーカーズマーク700円
  • ラフロイグ10年900円
  • 角瓶700円
  • 山崎12年1000円
  • 白州12年1000円
※価格は全て税別です
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