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【セミナー/イベントレポート】伝説のマスターディスティラー、ジミー・ラッセル氏が語るプレミアムバーボン『ワイルドターキー』の魅力

160年の歴史と、受け継がれる飽くなきこだわり

3月6日、グランドプリンスホテル新高輪の国際館パミール3F 翠雲で、『ワイルドターキー』の蒸溜所責任者、ジミー・ラッセル氏によるブランドセミナーが開催された。

ワイルドターキーは言わずと知れたケンタッキーを代表するプレミアムバーボン。一切の妥協を許さず伝統製法を守り続ける作り手たちの情熱と、ケンタッキーの自然が作り上げる本物の味は、歴代の米国大統領たちからも愛されてきた。会場の入り口には、「ワイルドターキー スタンダード」をはじめ、日本でのみ販売されている「ワイルドターキー 8年」や「ワイルドターキー 13年」のほか、3月10日に数量限定で新たに発売された「ワイルドターキー ダイヤモンドアニバーサリー」の美しいボトルたちがずらりと並び、来場者たちを出迎えた。

2000年にケンタッキーバーボンに殿堂入りしたジミー・ラッセル氏が来場者と同じ入口から登場すると、会場はどよめき、熱気が走った。ゆったりとした足取りでステージに上がり、「今日は存分に楽しんでいただければと思います」という同氏の言葉と共にセミナーは幕を切った。

160年の歴史が織り成す最高峰のバーボン

マスターディスティラー中のマスターディスティラーと言われるジミー・ラッセル氏が、バーボンの聖地ケンタッキー州ローレンスバーグの蒸溜所の門をくぐったのは1954年。「以来、半世紀を超える年月を旨いバーボン造りのために捧げてきました。当時から何も変わっていませんし、旨いバーボンを造るには、妥協も許されません」とラッセル氏。誕生秘話を踏まえつつ、最初にワイルドターキーの歴史について語ってくれた。

ワイルドターキーの始まりは、1855年オースティン・ニコルズ社がニューヨーク州で行っていたワインとスピリッツの行商にある。そして、1940年、当時の蒸溜所オーナーであるトーマス・マッカーシーがアメリカ原産の鳥「七面鳥」のハンティングに出かける際、貯蔵庫から1本のバーボンを持参すると、仲間たちから大好評を得たという。「この時彼らが口にしたバーボンは、ワイルドターキー101(日本でいう『ワイルドターキー 8年』)と同じ50.5%のアルコール度数だったのです。つまり、ワイルドターキー101の始まりはここにあるのです」とラッセル氏。狩仲間の一人が"ワイルドターキー"と呼び始め、マッカーシー氏はそのユニークなネーミングが気に入り、後にブランド名として命名した。

長い歴史が紡がれてきた間、次々と新製品が開発された。1976年にはハチミツと甘みを加えた「ワイルドターキー アメリカンハニー」が、1991年には一切加水をせず、樽から出したままのアルコール度数で瓶詰めを行う「ワイルドターキー レアブリード」が、また1995年には「ワイルドターキー ケンタッキースピリット」という名のもと、シングルバレルを発売(日本未発売)。「2000年、私の勤続45周年を祝って、"ワイルドターキー ラッセルズリザーブ"を発売しました。これは10年ものでスモールバッチです(日本未発売)。そして2014年、勤続60周年を記念して、息子のエディ・ラッセルが"ワイルドターキー ダイヤモンドアニバーサリー"を造ってくれました」。

糖化、発酵、蒸溜...ワイルドターキー流・こだわり抜かれた製造工程

ラッセル氏が次に紹介してくれたのは、世代を超えて守り受け継がれるワイルドターキーこだわりの製法だ。「バーボン造りには、少なくとも51%のトウモロコシを使用することが、アメリカの連邦政府で法定化されています。私たちはもちろんこのルールに則った製造を行っていますが、一般的なバーボンメーカーに比べると、トウモロコシの比率は少なめで、ライ麦と大麦を多く使っていることが特徴的です。ライ麦を多めに使うことで、大胆かつスパイシーな味わいに仕上がるのです」とラッセル氏。「もうひとつのこだわりは、なんといっても"水"です。バーボン造りには水が欠かせません。私たちは蒸溜所の敷地内に流れる"ライムストーンウォーター"という水を使っています。ケンタッキー州の地盤は主にライムストーンと呼ばれる石灰岩で作られていて、その地下を流れる水は、自然にろ過され、良質の清水となって湧き出ています。それはまさにバーボン造りのための水と言っても過言ではありません」。

バーボンには、「糖化⇒発酵⇒蒸溜⇒熟成」の4つの製造工程がある。「糖化」のステップではでんぷんを糖分に変え、「発酵」では糖化工程を経たマッシュにイースト菌酵母を加えていき、72時間かけて自然発酵させていく。そしてアルコールを分離・濃縮する「蒸溜」のステップでは、高さ52フィートの銅製の蒸溜器を使用し、独自の手法で連続蒸溜を行っている。この工程で一番下に溜まる"おりカス"のようなものは、タンパク質を多く含んでいるため、蒸溜所の近くの家畜業者や魚の養殖を行う業者に卸し、えさとして使われているという。

連続蒸溜した後、タブラーと呼ばれるポットスチルで蒸溜にかける二次蒸溜を行うのがワイルドターキー流だ。「蒸溜工程でアルコール度数を上げすぎてしまうと、風味や味わいが損なわれるので、そういった意味でも二次蒸溜は不可欠です。蒸溜時のアルコール度数は抑え目の62~63度が私たちのこだわりです」とラッセル氏。

『樽が息をすること』が熟成工程のキモ

4つめの「熟成」のステップでは、文字通り、内側を焦がしたホワイトオークの新樽で熟成させていく。樽焼には4つのレベルがあるが、一番軽いレベル1ではフレーバーや色がバーボンにあまりつかないとラッセル氏は話す。ワイルドターキーの蒸溜所では、最強のレベル4で焼き、クロコダイルスキンと呼ばれるテクスチャーに仕上げた樽を使用している。十分に焼き上げることで糖分が出て、バニラのような香りも加えられる。ラッセル氏いわく、「アルコール度数54~55%で樽詰めする。これが私たちのもうひとつのこだわりです。アルコール度数が低めの方が、しっかりとした骨格のある豊かな味に仕上がると信じているからです」。7階建ての貯蔵庫に樽を運び入れ、じっくり時間をかけて寝かせていく。

一般的には、熟成期間が長ければ長いほど良いバーボンに仕上がると思われる節があるが、あまり長く熟成させてしまうと、せっかくの風味や甘みが落ちてしまい、ウッディさやスモーキーさが強くなりすぎる。そのため、「7~12、13年くらいがベストではないかと思っています」とラッセル氏。現在、50万樽近くのワイルドターキーが貯蔵庫で眠り、熟成工程を経ているそうだが、旨いバーボン造りには、"樽が息をすること"が要であるゆえ、季節によってもさまざまな工夫が施されている。「夏場、暑くなると膨張した液体がしっかりと樽の中に入り込み、冬になると寒さで液体は縮小し、そこで息をする形になります。これらのプロセスを繰り返すことで、より味わい豊かになり、バニラの風味や甘みも出てきます。貯蔵庫の3~5階はそのままでもベストな状態が保たれていますが、1階は常時涼しく、逆に7階は夏になると暑くなりすぎてしまいます。すると、熟成の具合が変わりますので、1階と7階の樽を入れ替えたりして、バランスのとれた熟成を行うようにしています」。

スタンダード、8年、13年。バラエティに富む香りと味わい

セミナーも中盤に入り、いよいよテイスティングへ。「この瞬間が最高ですよね」と笑顔いっぱいで話すラッセル氏の説明と共に、「ワイルドターキー スタンダード」「ワイルドターキー 8年」「ワイルドターキー 13年」、そして、3月10日に発売された「ワイルドターキー ダイヤモンドアニバーサリー」ほか、「ワイルドターキー レアブリード」「ワイルドターキー ライ」、全6種のテイスティングが行われた。

「ワイルドターキー スタンダードは、まさに私たちのスタンダード・バーボンです。アルコール度数は81プルーフ(40.5度)、バーボンの色は、約7年の熟成期間を経てできた自然の色です。一切着色はしていません。これは私の好みなのですが、まずは口を閉じたまま香りを嗅ぎ、次に口を開いて嗅ぐと、全く異なる香りを感じ取れるので皆さんにもぜひ試していただきたいです。キャラメルやバニラの風味、甘さ、夏っぽさなどが感じ取れるのではないでしょうか?香りと同様の味を楽しんでいただけるのではないかと思います」。ラッセル氏オススメの味わい方は、"ケンタッキー・チュー"と言われる"ケンタッキー噛み"。「しっかりと噛み、口全体に味を広げることがポイント」なのだそう。キャラメルやバニラの風味が余韻としてしっかり残る逸品だ。

「ワイルドターキー 8年」は、前述の通り、1942年に当時の蒸溜所オーナー、トーマス・マッカーシーと彼の狩仲間が口にしたものと同じアルコール度数50.5%の日本限定発売のバーボン。「ワイルドターキーで仕事をはじめて60年になりますが、私の知る限り、造り方は当初から一切変わっていません」とラッセル氏。「ワイルドターキー 8年」は、「ワイルドターキー スタンダード」に比べて熟成期間が長いため、キャラメルやバニラの風味、甘さがより強く、色も深みを帯びている。加えてフルーティー感のある大胆な味に仕上がっている。

同じく日本でしか販売されていない「ワイルドターキー 13年」は、ネーミングの通り、13年間の熟成期間を経て生まれたバーボン。「ワイルドターキー 8年に比べると、また一段階色が深みを帯びているのが見て取れるかと思います。また、味わいにおいてはウッディ感やスモーキーな風味も汲み取れるのではないでしょうか?」。会場は徐々に和やかなムードになり、来場者からはラッセル氏に対する質問も少しずつ出始めた。

息子が父に贈るプレミアム・バーボン『ダイヤモンドアニバーサリー』は珠玉の逸品

「ワイルドターキー ダイヤモンドアニバーサリー」 は、息子のエディ・ラッセル氏がジミー・ラッセル氏の勤続60周年を祝うべく、秘密で造ったという数量限定のプレミアムバーボン。日本、アメリカ、オーストラリアの3ヶ国でのみ発売の稀少な逸品だ。「実をいうと、個人的には16年ものだけですと、ウッディ感が強すぎて好みではありません。それを知っている息子は13年ものと16年ものをブレンドして造ってくれたのです」。2014年で16年の熟成期間になるよう、エディ氏は分けて貯蔵庫に保管していたのだそうだ。「キャラメルやバニラの風味、甘みに加えて、夏っぽさやウッディさも感じられるかと思います」と言いながら、自身のグラスを一気に飲み干したラッセル氏。「お気づきでしょうか?全部飲んでしまいました」とチャーミングな一面も見せてくれた。

6年もの、8年もの、12年ものをブレンドしたアルコール度数56%の「ワイルドターキー レアブリード」は樽から出てきたまま瓶詰めされたバーボン。「キャラメルっぽさ、夏っぽさ、甘み、フルーティー感に加えて、12年もの特有のウッディさ、スモーキーさが感じられると思います。他のものに比べると、キャラメルっぽい香りが強く感じられるのではないでしょうか?まろやかな美味しい味に仕上がっているかと思います」。「ワイルドターキー レアブリード」がお気に入りのひとつだというラッセル氏は、自宅では、妻と一緒に話をしたり、テレビを見たり、読書をしながら、ストレートかオン・ザ・ロックでちびちび飲むのが好きだそう。「皆さん、お好きなスタイルでお飲みいただければと思いますが、海外での、私なりの決まりがひとつあるのでご紹介します。それは、その土地の水があまり口に合わないと感じる時は、せっかくのバーボンの味が損なわれるので、オン・ザ・ロックでは飲まないようにしているということです。日本の水は好きですね。丸く大きなボール状の氷がお気に入りです」。

テイスティングの最後を飾るのは「ワイルドターキー ライ」。ライ麦が51%以上で、残りがトウモロコシと大麦で出来たライウイスキーは、スパイシー感があり、コショウっぽさや土っぽい風味の仕上がりで独特の味を醸し出している。元々、ライウイスキーを製造していたのは、ワイルドターキーとジム・ビームのみだったが、昨今アメリカでは人気が高まり、供給が追いつかないほどだという。
今や男性のみならず、女性が好むアルコールとして親しまれている。「あまり長く熟成すると、スパイシーさや土っぽさが強くなりすぎてしまうので、5~6年の熟成期間が好みです。ライ麦は調達が難しく、ここ3~4年はかなり力を入れて集めてきました」。バーボン同様、ライウイスキーも一切着色しておらず、熟成期間を経た自然の色だ。キャラメルやバニラの風味、甘みのあるバーボンとはまた一味違った"大地の風味"が楽しめる逸品だ。

セミナーの最後には、ラッセル氏のサイン入り「ワイルドターキー ダイヤモンドアニバーサリー」が1名、「ワイルドターキー 13年」が3名、ワイルドターキー特製T シャツが6名に当たる抽選会が行われ、会場は熱気に包まれた。当選者は壇上に上がり、ラッセル氏と記念撮影をし、嬉々とした表情で満ち溢れていた。来場者全てに、ワイルドターキーをスモークチップに染み込ませて燻製した「ワイルドターキーフレーバージャイアントコーン」と、ラッセル親子の写真にワイルドターキーのロゴが刻まれたブランドセミナーの盾がプレゼントされた。

今回の来日は、「ワイルドターキー ダイヤモンドアニバーサリー」を造った息子のエディ・ラッセル氏も同行し、本セミナー当日には、関西エリアで同様のセミナーを行っていた。「普段、私たちが二人共、蒸溜所を留守にすることはほぼありません。今年からラッセル家5代目となるエディの息子が働き出したので、しっかりやってくれていることを期待しています」。

「ぜひケンタッキーにいらしてください。私たちの蒸溜所にお越しいただいたら、発酵室から蒸溜の工程、樽詰め、実際の瓶詰め工程までご覧いただき、心より歓迎させていただきます」と最後にラッセル氏。19歳にしてバーボン造りの世界に入った同氏は、故郷ケンタッキーと、そこに集う家族や仲間たち、そしてバーボンをこよなく愛する情熱の人。飽くなきこだわりでこれからも素晴らしいバーボンを世に送り出してくれるだろう。ライスシャワーのような拍手喝采と共に、セミナーは幕を閉じた。

ジミー・ラッセル氏インタビュー

セミナー終了後、特別にラッセル氏への個別インタビューが設けられ、バーボンにおける少し広い視点での話を伺えた。

─ ワイルドターキーはプレミアムバーボンの代名詞ですが、ジミー・ラッセル氏が考える"プレミアム"とはどのような意味合いでしょうか。
「全てのラインナップでコンスタントに品質を守ってきたことが"プレミアム"と称されたのだと思います。1日を、1年を積み重ね、伝統のバーボンをこれからも造り続けていきます」

─ 前回来日されたビーム家の7代目マスターディスティラーであるフレッド・ノー氏が、あなたを尊敬し、共にバーボンを盛り立てていきたいというお話をされていました。フレッド・ノー氏やビーム家とはどのような関係でしょうか。
「彼らとはいつも密に交流していて、非常に友好的な関係にあります。フレッドは、私の大変親しかった旧友、ブッカー・ノーの息子です。そのためフレッドは私のことを"ダッド"と呼んでいます。つい2週間前にも集会に一緒に出席しましたし、毎年9月にケンタッキー・フェスティバルというケンタッキー州のバーボン製造者だけが出展するイベントには、彼らも私たちも出展しています。蒸溜所同士のつながりは強いものですよ」

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