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曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」 ~サンボア・ザ・ヒルトンプラザ~

曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」

酒を楽しみたい・・・。そう思ったとき、人はバーという止まり木を探す。そしてバーテンダーと話をしながら酒なる嗜好品を味わっていくのだ。そんな酒の文化を創り出してきたバーも千差万別。名物のカクテルで勝負している店もあれば、バーテンダーの人柄や店の雰囲気で人を集めているところもある。数ある名物バーを探し、今宵はコレを飲んでみたい。

トワイスアップで香りの違いを楽しむ

大阪府・西梅田 サンボア・ザ・ヒルトンプラザ

「スキャパエディション」を変わった手法で

ヒルトンホテル大阪を出て、周囲を眺めると、この辺りも変わったなぁと思ってしまう。ハービスやヒルトンプラザウエストができ、JR大阪駅もJR大阪ステーションシティに生まれ変わった。現在、中央郵便局は工事中で、近年には大阪北ヤードができる。まさに梅田は進化し続けているのだ。ヒルトンホテルが大阪にお目見得したのは、いつだったろうか。確か私がまだ20代だった頃と記憶する。当時、真新しかったビルは、いつの間にか古い方のビルになってしまった。そんな追憶に浸りながら、ヒルトンプラザ(イースト)のエスカレーターを降りて行った。

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今回訪れるバーは、このヒルトンプラザの地下2階にある。関西で「サンボア」という、誰もが知っているバーだ。大阪では氷の入っていない角ハイボールが特に有名である。そもそも「サンボア」は、神戸・花隈で発祥している。岡西さんという創業者が大正7年に開き、当時、景気のよかった船会社の人などを中心に栄えたと聞く。岡西さんは、昭和に入ると、華街であった花隈から大阪へ移り、大阪証券取引所の裏辺りで「サンボア」を開いている。「サンボア」というと京都、堂島、ミナミ、北新地と色んな所にあるが、全てが同一店主ではなく、暖簾分けによるもの。「サンボア・ザ・ヒルトンプラザ」店長の伊與忠克さんの話では、「10年間『サンボア』で勤め、その店のマスターの推薦があれば『サンボア』と言う名のバーを持てるシステムになっています。但し、他店のオーナー11人全員が承認しなければならないですがね」とのこと。オーナーは違えども、ロゴなどは同じ。多くの店が同じコースターやマッチを使用している。特にマッチ裏面には全ての店が列記されており、これを見てしまうと違うオーナーが存在するというのがわからなくなってしまうほどだ。残念ながら「サンボア」を創業した岡西さんの店はなくなっている。その岡西さんと行動を共にし、店を持ったのが鍵澤さん。「堂島サンボア」の初代マスターである。「ミナミサンボア」はその鍵澤さんの弟が始めたもの。今日、私が飲もうとしている「サンボア・ザ・ヒルトンプラザ」は、その人の長女が経営している店だという。「サンボア」の歴史を語ると、スペースが足りなくなるのでここでやめるが、6年後には最初の「サンボア」ができて100周年を迎える。その時は全店合同で催しをやるそうだ。

さて、ヒルトンプラザ地下2階にある「サンボア・ザ・ヒルトン」だが、この店は、場所柄11時から開いている。11時から16時までは喫茶利用としているのだが、その時間もバーテンダーが最低ひとりはいるために、昼酒も楽しめる。私が訪れた17時前はすでに本格バータイムに入っていたのだが、幾人か喫茶利用の人も残っていた。カウンター席に座り、店長の伊與さんにお薦めの一杯を作ってもらうことにした。伊與さんがこの日、私に薦めたのは「バランタイン17年スキャパエディション」である。「バランタイン」は、40種以上のモルト原酒をブレンドして造られているウイスキーだが、この「スキャパエディション」は、「バランタイン17年」の限定品として生まれたもの。キーモルトのひとつである「スキャパ」の香りや味わいを際立たせて造っている。

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伊與さんはその酒を「トワイスアップで――」と言う。ただ、私の目の前に差し出されたものは、「バランタイン17年スキャパエディション」のダブル(60ml)とミネラルウォーター(60ml)の2つであった。トワイスアップというと、氷なしで1:1に割ったものを想像するが、これだとストレートとチェイサーのようである。その疑問を伊與さんに投げかけると、彼は「ウイスキーに水をちょっとずつ足しながら、その変化を楽しんでください」と説明してくれた。

まず1~2滴水を垂らしてみると、そのとたん香りがパッと広がったように思う。その香りは樽の香りでもあり、花のような香りでもある。そしてさらに水を注ぎ入れ、口に運んでみる。すると、濃厚な香りが次第に柔らかい香りへと変化していく。「40度以上あると、アルコールの刺激で香りは抑えられてしまうんです。水を足すことによって開いていくようにするんですよ。最後にはスモーキーな香りも感じられるようになりますよ」と伊與さんは言う。確かにこうして飲むと、繊細な香りほど後になると出てくるのだと実感できる。伊與さんに聞くと、このようなスタイルで提供しだしたのは、「山崎蒸溜所」のブレンダーによる助言がきっかけだとか。「サンボア」で樽買いをする時に、サントリーのブレンダーから「味をみるのには、この飲み方がオススメです」と言われたらしい。以来、この店では、トワイスアップというと、ウイスキー(W)と同量のミネラルウォーターを別々に提供するようにしている。「本来のトワイスアップ(1:1の味)を楽しみたければ、ウイスキーのグラスに全ての水を入れてしまえばいいのですから。要はお客様の嗜好次第。同じトワイスアップでも遊びながら飲るのも時には面白いでしょ」。よ~く考えれば、ロックはこれと同じ原理である。氷が少しずつ溶けていき、ウイスキーが薄まっていく。まさにこの飲み方を自動的にやっていたのだと気がついた。トワイスアップでもこうして楽しめば、色んな香りが交互に出てくるようで面白い。そして水を半分足した時点で飲んでみると、ハチミツのような甘い香りが口内に広がったような気がした。

早い時間からカウンターに陣取るひとつの理由とは...

「サンボア・ザ・ヒルトンプラザ」では、この「スキャパエディション」を9月に入ってから出している。9月だけこの酒と「バランタイン17年」(スタンダードのもの)を少し格安設定し、飲み比べを薦めているそうだ。「高級ブレンデッドの王道ともいえる『バランタイン17年』は、実にバランスのいい酒ですね。重量感があり、ゆっくり時間をかけて楽しむにはいい。どんな飲み方をしても合うのですが、あまり冷やさず、濃いめの水割りにするのがオススメですね。珍しいからと『バランタイン17年』と『スキャパエディション』を飲み比べをするように薦めると、よく出るんですが、最近はむしろラベルがきれいなので『スキャパエディション』を注文する人の方が増えています」と言う。

伊與さんは「スキャパエディション」が発売されると聞いて想像を巡らしていたようだ。でもその想像とは違ったタイプの酒が来たと話している。「より重厚なタイプが出るのかと思っていたら、軽やかなのが出たんです。この『スキャパエディション』は、なめらかで甘く、華やかな香りを有しています。オレンジやピーチのような甘い味わいがし、余韻も長い。軽やかな分、薦めやすく、女性にもすこぶる評判がいいんですよ」。この酒は、「スキャパ」を強調した分だけ、甘さとコクが出ているのかもしれない。「個人的には」と前置きしながらも伊與さんは、「スキャパ」自体の印象を「余韻が深く、オイリーな感じ」と表現している。伊與さんとこのように酒談義をしながら一杯飲るのが楽しい。だからであろう、早い時間でも席が埋まっていく。

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ところで最後に伊與さんの経歴について話しておきたい。伊與さんは若い頃、梅田のDDハウス内にある「アンドレ」で働いていた。実は「サンボア」の中でもこのオーナー店だけが異なったブランドの店を持っている。何でもアンドレさんというバーテンダーがその昔、勤めたいと言ってきたので「サンボア」で外国人バーテンダーはおかしかろうと、梅田にその名をつけたバーをオープンさせたのが始まりらしい。その「アンドレ」は、重厚感がある「サンボア」と違い、カジュアルな雰囲気。殊にカクテルがよく出るバーとして知られている。

「アンドレ」で伊與さんは来る日も来る日もカクテルを作り続けていた。「55席もあり、それが満席な上に、立ち呑みが12人ほど入る。19時から混み始め、0時までカクテルをひたすら作っていました。『アンドレ』にいたことがいい修行になったと思います」。当時、「サンボア・ザ・ヒルトンプラザ」は、間口さんがマスターを務めていた。銀座で繁盛店として名高いあの「ロックフィッシュ」のオーナー・間口さんである。ヒルトンの「サンボア」は無休なので、日曜日に誰か任せる人がいないかと思い、白羽の矢が立ったのが「アンドレ」にいた伊與さんだった。こうして「サンボア・ザ・ヒルトンプラザ」を手伝ううちに、間口さんが独立したために伊與さんが店長職を担うことになったのである。「この店は『サンボア』一筋という人が多く、当時、私は外様的存在。一年もつかどうかが勝負でしたね」と当時を振り返っている。「まさか『サンボア』に勤めるとは夢にも思わなかった」という伊與さんが、今では堂々とその看板を背負っている。「プレッシャーもあったが、ありがたいことにお客様が育ててくれた」は本音だろう。「アンドレ」でカクテルを学び、「サンボア」でサービスを学んだ伊與さんは、その経験の豊富さから、話していると、いくらでも話が広がっていくようだ。だからこうして私は早いうちから「サンボア」のカウンター席を陣取っている。「スキャパエディション」がほぼグラスになくなってきた。「次は『響12年』のソーダ割をもらおうか」。そんな言葉に早速、伊與さんは冷蔵庫から「響12年」を取り出した。「うちでは『響12年』はその性質を考えてハイボール専用にしているんですよ」。シングルと注文しない限り、この店ではダブルで登場する。濃く爽やかな一杯が期待できると私の胸は高なった。

サンボア・ザ・ヒルトンプラザ

お店情報

住所大阪市北区梅田1-8-16 ヒルトンプラザB2

TEL06-6347-7417

営業時間11:00~23:00

定休日無休

メニュー
  • バランタイン17年スキャパエディション(W)2100円
  • バランタイン17年(W)2100円
  • 角ハイボール(W)800円
  • 角ハイボール(S)700円
                        
  • 山崎12年(W)1700円
  •                     
  • 白州12年(W)1700円
  •                     
  • マンハッタン1300円
  •   
  • ジントニック1200円

↓バランタイン17年 スキャパエディションの詳細はこちらから↓
http://bartendersclub.suntory.co.jp/brand/2012/08_2/index.html
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