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曽我和弘のBAR探訪記「噂のバーと、気になる一杯」 ~PaPa Hemingway(パパ・ヘミングウェイ)~

曽我和弘のBAR探訪記 「噂のバーと、気になる一杯」

酒を楽しみたい・・・。そう思ったとき、人はバーという止まり木を探す。そしてバーテンダーと話をしながら酒なる嗜好品を味わっていくのだ。そんな酒の文化を創り出してきたバーも千差万別。名物のカクテルで勝負している店もあれば、バーテンダーの人柄や店の雰囲気で人を集めているところもある。数ある名物バーを探し、今宵はコレを飲んでみたい。

「メーカーズマーク」をゆっくり、ゆっくり...

神戸・三宮 PaPa Hemingway(パパ・ヘミングウェイ)

神戸らしいバーでウイスキーフロートを

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「神戸という街は、酒好きには適したところだ」。そんな風に言ったのは、我が友人の編集者である。彼の論理では、坂の上の北野町辺りでワインを飲みながらフレンチやイタリアンを食べ、それが終わると、坂を下っていく。そうすれば、途中に何軒ものバーがあり、そこを梯子(はしご)していくうちにやがて駅へ辿り着くというのだ。神戸は古くから西洋の文化を受け入れて来た関係上、いいバーが多い。だから酒呑みにはたまらないのだとも話していた。

私がこのコーナーで、神戸の記念すべき一軒目に紹介するのは、「PaPa Hemingway(パパ・ヘミングウェイ)」である。北野坂の一本西の路地、「正家」の裏辺りといえば、神戸の人ならすぐに察しがつくだろう。この三宮駅近くのバーは、NBA(日本バーテンダー協会)の神戸幹事長を務める福冨淳也さんの店である。福冨さんは、阪神淡路大震災まで三宮にあった「チャールストンクラブ」で店長を務めていた。それが震災によりビルが倒壊し、店自体もなくなってしまった。その後、系列店の立ち上げに加わり、バーの作り方を勉強したという。その知識も加わったこともあってか、少ししてから自身の店「パパ・ヘミングウェイ」を加古川でオープンしている。1995年から加古川の明姫幹線沿いでバーをやっていたのだが、場所的な理由から駅近へ移転することになり、空き物件を探して歩いた。その時、JR加古川駅ならいっそ慣れ親しんだ(仕事を覚えた)三宮の方がいいだろうということになり、今の場所に2003年に移って来ている。

福冨さんは「神戸の人は、バーの使い方がうまい」と言う。飲食店にはレストランから食堂、居酒屋、バー、スナックと色々あるが、神戸の人は上手に使い分けていると話している。「こうしてカウンターに立っていてわかることは、飲み方がオシャレだということ。かっこいいおじさん、おじいさんがホントに多いですね。それに年配者と若い人が混ざり合っても店の雰囲気が崩れない、そんな特徴もこの街にはあるんですよ」。だから"神戸らしいバー"だと表現されるのは、ある種の褒め言葉だそう。「うちもたまに言われることがありますが、それを聞くとまさにバーテンダー冥利につきますね」。

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いつもの如く、今日も早くから私はカウンター席に陣取って一杯飲っている。「パパ・ヘミングウェイ」の長いカウンターの奥の席にまるで常連かと思わせる勢いでどっかと座り、ウイスキーフロートを味わっているのだ。先日、サントリー本社で「メーカーズマーク」の封蝋を体験してからは、やたらとこの赤いマークのバーボンが気になって仕方がない。だから今日も一杯目に「メーカーズマーク」を注文した次第である。

福冨さんに「どんな飲み方がオススメ?」と聞くと「ウイスキーフロートにしましょうか」と言ってくれた。個人的に水割りやロック、ハイボールはよく注文するが、フロートはあまり頼まない。でも層がきれいに分かれて美しく映るウイスキーフロートは嫌いではない。最初はウイスキーそのものの味が舌に伝わり、その後、水割りが一気にカクテルになる。そんな面白さが味わえる飲み方である。

「じゃあ、それでお願いします」と言うと、福冨さんは丸めのグラスに丸氷を入れて、フロートを作り出す。「水割りやハイボールは、メーカーが造ったものに水や炭酸を注ぐだけなので家でもやれるわけです。お客様に納得してもらうには、少しでもバーらしい仕事を見せねばなりません。そのひとつが丸氷。私はグラスを見に行くのが好きで、色んなグラスを揃えています。この丸めのグラスには丸氷がフィットしますし、丸いと角がないからゆっくり溶ける、そんな利点もあるんですよ」と福冨さんは説明してくれた。

丸氷をグラスに入れると、ミネラルウォーターを注ぐ。そして「メーカーズマーク」をその上からゆっくり垂らしていく。ミネラルウォーター2に対して、ウイスキーが1になるくらいが目安。普段の水割りシングルだと30mlだが、これは少し多めの40mlほど入っているという。

福冨さんが作ってくれたウイスキーフロートは、見事に二層ができている。その層を壊さぬようゆっくり口に含むと、「メーカーズマーク」のクセのないまろやかな味が伝わってくる。同酒はライ麦の代わりに冬小麦を用いており、その影響もあるからだろう、甘くスムーズな味が特徴となっている。「このウイスキーは、誰でも知っている有名ブランドなので、薦めなくても勝手に出るんです。甘みもしっかりあるので、女性にも人気ですよね。一般的にはロックが多いようですが、曽我さんのように『メーカーズマーク』で何か作ってと言われたらウイスキーフロートか、ミントジュレップを出すようにしています」と福冨さんは話していた。ウイスキーフロートは、口内で混ざるようにゆっくりグラスを傾けながら飲むのがコツだとか。勢いをつけてしまうと、すぐに水割りになってしまう。「不細工な飲み方をすると、せっかく作ってもらったのに申し訳なくて...」と普段あまりウイスキーフロートを注文しない理由を述べると、「そんなこと気にしなくってもいいんですよ。要は美味しく味わえばいいんです」と福冨さんは微笑みながら返してくれた。

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シガーに合ったカクテルを、「メーカーズマーク」で

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福冨さんがよく受ける質問に店名の由来がある。「パパ・ヘミングウェイ」とつけているのだからよほどヘミングウェイ通だと誰もが思うだろう。それが昔はヘミングウェイのファンじゃなかったそうだ。福冨さんはダイキリに思い入れが強く、自身もそれを得意としている。ダイキリのことを調べていると、よくヘミングウェイが登場するとかで、「店にヘミングウェイの名をつけたらダイキリがよく出るかな...」ぐらいの軽い気持ちで命名したらしい。ところがいざ「パパ・ヘミングウェイ」を名乗ってみると、ヘミングウェイのファンが通って来て小説に出てくるものや彼が考案したカクテルを注文したりする。これではいけないと思い、彼の本を読みあさり、今ではすっかりファンの仲間入りをしている。ちなみにヘミングウェイが考案したのは、「午後の死」なるカクテル。自身の短編から名づけたもので、独特な薬草の風味が特徴的。当初はシャンパンと黒色火薬を用いて作っていたらしいが、その後、「アブサン」(薬草系リキュール)が使われるようになったそうだ。

私は煙草をやらないので、葉巻(シガー)の旨さといわれてもわからないのだが、福冨さんはANSA(全日本ソムリエ連盟)認定シガーアドバイザーの資格を有しており、この店は葉巻好きが集まるところとしても知られている。今でこそシガーを売りにしているバーは何軒もあるが、福冨さんが前出の資格を取った時には誰も県内には有資格者がいなかったそうで、まさに草分け的存在ということになる。「その頃は資格を取って団体に加盟していないと、情報が回って来なかったんです。そのためにも取得したいと思ったんですよ」。

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そんな福冨さんが二杯目には、シガーに合うカクテルを作ってくれるという。しかもそれには「メーカーズマーク」を用いてくれるのだとか。聞けば、「ウイスキーマック」は、本来ならスコッチでやるそうだが、それを「メーカーズマーク」で作ってくれるという。その理由として福冨さんは「メーカーズマーク」のクセのなさが実にフィットするのだと説明していた。これは「メーカーズマーク」2に対し、ジンジャーワイン「ストーンズ」1の割り合いだ。「ストーンズ」は、ベルモットに近い甘味果実リキュールで、そのまま炭酸で割ったり、ビールに入れたりして飲むそうだ。「メーカーズマーク」は、アルコール度が45なのでうまくできるが、それ以上高いものだと、ジンジャーワインの甘さが出なくなる。さらにクセのあるバーボンだと、この味を形成しなくなるのだろう。なのでバーボンでやるなら「コレがいい」と「メーカーズマーク」のボトルを指しながら作り方を教えてくれた。

「ウイスキーマック」は、食後の酒なので、シガーに合わせることが多い。私にはよくわからないが、福冨さんは「甘めのある方がシガーには合うのだ」と話していた。俗に「C」のつくものが7つあれば、楽しい食後が過ごせるといわれている。その7つとは①シガー②コーヒー③コニャック④チーズ⑤チョコレート、そして⑥がカンバセーション(会話)で、⑦がコージー(なごやかな雰囲気)である。「ほとんどがバーにあるものでしょ。だからシガーは、バーにあって当然なんですよ」と福冨さんは語っていた。「でも、いくらシガーのあるバーができても、そのほとんどが店主の趣味ではない。なので状態の悪い葉巻を揃えてしまいがちなんです。きちんとした状態なら15年ももつんですよ。何でも本人が好きじゃないと、長続きはしないものです」。話はウイスキーから徐々に葉巻の方へ流れている。私にとっては知らないことだらけなので、実に興味深く聞き入っていた。「メーカーズマーク」のマスターディスティラーであるグレッグ・デイビスは「自分たちの目が行き届き、常に厳選、吟味できる環境を保たねばならない」と書いている。そんな言葉が福冨さんのシガー論理に通じるものがある。「パパ・ヘミングウェイ」で飲んだ一杯一杯は、まさにスイート&スムーズのためにある―、今日はそんなフレーズがぴったりなバー探訪だったように思う。

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PaPa Hemingway(パパ・ヘミングウェイ)

お店情報

住所神戸市中央区中山手通1-7-20 第3天成ビル2F

TEL078-391-2838

営業時間18:00~翌2:00(日祝日は~24:00)

定休日年末年始

メニュー
  • メーカーズマーク900円
  • メーカーズマークのウイスキーフロート900円
  • メーカーズマークのウイスキーマック1100円
  • メーカーズマーク461000円
  • 白州12年1200円
  • 山崎12年1200円
  • 響17年1400円
  • マッカラン12年1200円
  • ジムビームホワイトラベル700円
  • ビール700円~
  • ダイキリ900円
  • フローズンダイキリ1300円
  • モヒート1100円
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