2016年03月10日
『バランタイン』にとって欠くことのできないキーモルトとして知られる『スキャパ』。スコットランドの最北部・オークニー諸島にある蒸溜所では、琥珀色の輝きを放つウイスキーが、昔と変わらぬ原料・製法で丁寧に作られている。
スキャパからはこれまでも上質なウイスキーが発売されてきたが、2016年2月16日には待望のニューボトル『スキャパ スキレン』が日本でリリースされた。新商品の発売に合わせて本国スコットランドから、バランタインの5代目マスターブレンダーであるサンディー・ヒスロップ氏が来日。ANAインターコンチネンタルホテル東京でブランドセミナーが開催された。
今回で3回目の来日となるヒスロップ氏は、「日本を訪問させていただくことを光栄に思います。本日はバランタインにとって非常に重要なキーモルトであるスキャパ、そしてバランタインファミリー全体についてご説明させていただきたいと思います」とあいさつ。スキャパの紹介動画に続いて、蒸溜所の歴史や製法へのこだわりなどが語られた。
オークニー諸島で最も大きな島であるメインランドに、スキャパ蒸溜所が作られたのは1885年のこと。以後、第一次世界大戦中に蒸溜所の建物が英国海軍将校の兵舎として使われるなど数奇な運命を辿りながら、現在もウイスキー作りが行われている。
ヒスロップ氏によると、現在スキャパ蒸溜所で働いているスタッフはたったの5人ということ。小規模ながら、コンピューター制御に頼ることなく、昔と同じスタイルで製造を続けているという。
スキャパのウイスキーに使われている原材料は、大麦とイースト、そして水のみ。アイランドで作られているウイスキーとしては、非常に珍しいことにノンピーテッド麦芽が使用されている。
糖化を経て出来上がった麦汁は、業界最長といわれる発酵時間を経ることで独特のフレーバーを形成。スコットランドで唯一稼働しているというローモンドスチルで蒸溜され、樽に詰められる。使用されるのはファーストフィルのバーボン樽。これを、海のそばにある貯蔵庫で熟成させることで、さらに複雑な味わいが生み出されるそうだ。
スキャパ蒸溜所の説明に続いては、『スキャパ スキレン』の試飲が行われた。
最初に用意されたのは、スキャパのニューメイク。日本でこれが試飲されるのは初めてのことだという。
「まずは香りを楽しんでいただきたい」というヒスロップ氏は、グラスに少量の水を加えるよう指南。非常に香り高いフローラルな芳香と、パイナップルを思わせる甘い香りが立ち上がった。さらには、新品のレザーのようなニュアンスも感じられる。
続いては今回発売された『スキャパ スキレン』の試飲。同じく、グラスに加水すると、洋梨やパイナップルのような香りに加え、オークの樽香が鼻腔をくすぐった。味わいはハニーデューメロンのような甘さが際立ち、続けてシトラスのフレーバーが広がる。フィニッシュは非常に長く、口の中に爽やかな甘みが続く仕上がりになっている。
『スキャパ スキレン』の紹介が終わると、話題は『バランタイン』へ。
1827年にエディンバラで創業し、1895年にはビクトリア女王から王室御用達として迎え入れられたバランタイン。スコットランド紋章院から授けられたエンブレムには、スコッチウイスキー作りの4大要素である大麦、水、ポトスチル、樽が描かれている。
「ブレンディングによって生まれた芸術品」とも称されるバランタインのウイスキーは、40種類以上の原酒の重なりによって生み出される。それらの原酒はハイランド、ローランド、スペイサイド、アイラという4つの地域で作られ、それぞれに異なる個性を持っている。これらを1本のボトルにまとめ上げてきたのが、歴代のマスターブレンダーだ。190年の歴史の中で、たった5人しかいないマスターブレンダー達の手によって、バランタインの味と伝統は守り続けられている。
5代目マスターブレンダーを務めるヒスロップ氏は、ブレンデッドウイスキーの複雑な製法を油絵の描き方に喩え、次のように説明した。
「グレーンウイスキーは、真っ白なキャンバスに色をのせる前の〝下塗り〟のような役割を果たしています。これに対して、モルトウイスキーの役割は、絵に〝鮮やかな色を与える〟ことに他なりません。いずれも重要な役割で、すべての要素が調和することによって、何層にも重なった深い味わいのウイスキーが完成するのです」
こうした微妙な調整を繰り返しながら、最高のウイスキーを作り上げていくマスターブレンダー達は、まさに芸術品を作り上げる〝アーティスト〟と呼ぶに相応しい。
今回のセミナーではバランタインのウイスキーの試飲も行われた。
中でも貴重とされるのが、ヒスロップ氏が「滅多にテイスティングできないウイスキー」と語った17年熟成のグレーンウイスキー。華やかなフローラルの香りと、アメリカンオーク由来のバニラ香が特徴的なウイスキーで、口に含むとクリーミーさと甘さが広がる。余韻は短いが、味わいと同様に甘いフィニッシュが楽しめた。
次に紹介されたのは、アメリカンオークで17年熟成されたグレンバーギーのシングルモルト。非常にふくよかな果実香と、シロップのように凝縮感のある味わいが印象的で、甘い余韻が長く続く。その役割について、ヒスロップ氏は「バランタインのウイスキーに、味わいの中核を成す丸みと、フルーティさを与えています」と語った。
バランタインを語る上で欠かせない2つのウイスキーの説明に続いては、ブレンデッドウイスキーの完成品ともいえる『バランタイン 17年』が登場。
17年熟成のグレーンウイスキーと比較すると、全体的にとてもスムーズなスタイルになっており、モルトの濃厚な味わいが感じられる。中でも際立っているのは、グレンバーギー由来の赤リンゴを思わせるフルーティなフレーバー。それに加え、蜂蜜のような甘さと、かすかなスモーキーさが感じられ、複雑かつ力強い味わいに仕上がっている。
ヒスロップ氏が「バランタインファミリーの代表製品」と明言する通り、『バランタイン 17年』は2015年のISCで最高賞を受賞。世界中のウイスキーファンを魅了している。セミナーの最後には、日本のファンに向けて「バランタインのウイスキーに決まった飲み方はありません。自分に合った飲み方で楽しんでください!」とのメッセージを残し、拍手喝采の中、会場を後にした。