「ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション」の日本代表が決定!

"ロンドンにまつわる映画"をテーマにした創造的なカクテルの共演!

約30カ国のバーテンダーが出場するワールドワイドなコンペティション

2011年からロンドンで開催され、オリジナリティあふれるカクテルを数多く生み出してきた「ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション」。今大会には、約30カ国のバーテンダーが出場しており、2017年2月にロンドンで行われる世界大会への出場者が各国で選出されている。
今回の大会テーマは「INSPIRED BY LONDON DIRECTED BY YOU」。「ビーフィーター24」を使用し、"ロンドンにまつわる映画"を表現したオリジナルカクテルの創作が課題となっている。11月末に東京で行われた日本ファイナルには、書類審査を勝ち抜いた8人のバーテンダーが出場し、世界大会への出場権をかけて互いの腕を競い合った。
開会に先立ち、サントリーアライド株式会社取締役副社長の島田朋彦氏が主催者代表の挨拶。「ファイナリストの方々には、その力を思う存分発揮していただいて、世界大会への切符を手にしてもらいたいと思います。そして世界大会では、日本のバーテンディングのクオリティの高さを見せつけていただいて、世界でも優勝していただきたいと切に願っています」とエールを送った。
また、日本ファイナルには、「ビーフィーター」のマスター・ディスティラーであるデズモンド・ペイン氏が来日し、島田氏と共に審査員を務めた。

卓越した技術とセンスがぶつかり合う日本ファイナルの戦い

一番手として登場したのは「パークホテル東京 Bar The Society」に勤務する南木浩史さん。トップバッターというプレッシャーを感じさせないリラックスした表情で、プレゼンテーションを開始した。
南木さんが題材に選んだのは、1990年代のイギリスを舞台にした映画「ハリー・ポッター」。主人公の少年・ハリーの好物で、昔からロンドンで愛されているバタービールから着想を得て、「ビーフィーター24」と合わせたカクテルを考案したという。
同作を題材にした理由について、南木さんは「劇中にロンドンの街並みがたくさん登場しており、そこには魔法グッズの専門店などが存在しています。ロンドンは、24時間魔法がかかっているような眠らない街で、魔法という言葉と本当に関係性が深いと思いました」と説明。また、仕事をしている中で「バーテンダーさん、魔法使いみたいだね」と言われることがあり、このことも"魔法"をテーマに選んだ理由のひとつだという。
「Liquid Wizard」と名付けられたカクテルの創作は、まずジュニパーベリーのオイルをベースにした香りをアロマディフューザーでグラスに閉じ込めるところから始まる。シェイカーには「ビーフィーター24」のほか、フルーティーさを担うピンクグレープフルーツジュースや、ハーバルさを演出するための自家製エルダーフラワーシロップ、余韻を引き立てるための自家製ハーブバタージンジャーエールが加えられ、氷と共にシェイク。会場からは、一斉に拍手が巻き起こった。
出来上がったカクテルは、魔法書を思わせるブックカバーをコースターにして提供され、グラスの中身だけでなく、見た目の演出でも「ハリー・ポッター」の世界観を表現した。

2番目に登場した「Fuglen Tokyo」の野村空人さんは、ロンドンのアンダーグラウンドで生きる若者達の姿を描いた「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」を題材にしたオリジナルカクテルを創作。自身がロンドンに住んでいた頃の体験を映画の登場人物に重ね合わせ、「カクテルを飲むことで若さを忘れないでほしい」という想いから「Forever Young」と名付けた。
流暢な英語でプレゼンテーションを行った野村さんは、身振り手振りを交えながら創作意図や使用する素材を説明。両手にひとつずつシェイカーを握ると、パワフルなシェイクで会場を沸かせた。素材には、パイナップルとカモミール茶のシュラブ、「ディサローノ」などを使用。「ビーフィーター24」のメインボタニカルであるグレープフルーツとアーモンドフレーバーを活かしたフレッシュで優しい味わいのティキ・カクテルを完成させた。

続いてステージに上がったのは「ザ リッツ カールトン京都 ザ バー」の浅野陽亮さん。クリスマスのロンドンを舞台に様々な愛の物語を描いた「ラブ・アクチュアリー」からインスピレーションを受け、「ビーフィーター」のテーマカラーであり、愛を象徴する"赤色"に輝く一杯を創作した。
「24/7 in Love」というカクテル名にある、"24"には「ビーフィーター24」の他に、「いつも」や「常に」という意味が込められており、浅野さんは「一度飲んだら忘れられない、またいつでも飲みたくなる、そんな愛されるカクテルになることを願って名付けました」と解説。"7"という数字は、このカクテルが「ビーフィーター24」、「ヒーリング チェリー リキュール」、フレッシュレモンジュース、アールグレイインフュージョンクランベリージュース、自家製ローズシロップ、アブサン、ストロベリーという7つの素材から成り立っていることを示している。
鮮やかな赤色のカクテルの隣には、「変わらぬ愛」という花言葉を持つローズマリーで作られたクリスマスツリーが並べられ、ローズの香りがするスチームと共にガラスケースに閉じ込められた。映画に登場しそうなほどロマンチックなカクテルを完成させた浅野さんは「皆様の周りにも愛は満ち溢れています。どうぞ大切な人を思い浮かべながら飲んでみてください!」という言葉でパフォーマンスを締めくくった。

「小さい頃、どんな夢を描いていましたか?」という問いかけからプレゼンテーションをスタートさせた「ホテル ラ・スイート神戸ハーバーランド」の福井昌和さんは、夢の国・ネバーランドを舞台にしたピーターパンの物語を創作する作家の姿を描いた映画「ネバーランド」を題材に選んだ。
ピーターパンの作者であるジェームス・マシュー・バリーは、「ビーフィーター」を生んだジェームス・バローと同じ時代、同じロンドンに生きた人物。福井さんは、2人のジェームスに共通する色として"グリーン"(ピーターパンの服と、「ビーフィーター24」のボトルに描かれたボタニカル)をテーマにカクテルの創作に挑んだ。
「私はこの『ビーフィーター24』から他のジンにはない、まるで森の芽吹きのような若々しいグリーンのアロマを感じます」と語る福井さんは、「ヘルメス グリーンティ」や紫蘇の葉、コリアンダーリーフで作ったグリーンアロマリキュールで、ハーバル、シトラス、そしてほのかに感じるスパイスの香りを演出。さらに、ジャスミンハニーシロップの甘さや、フレッシュグレープフルーツジュースの酸味と苦味で、ジェームス・マシュー・バリーの優しさや純粋さ、苦悩などを味わいとして表現した。
完成したカクテル「NEVER END」は、ローズマリーやローズヒップ、レモンバームなど、古来より若返りの秘薬として珍重されてきたハーブが入ったガラス容器の上に乗せられ、爽やかな香りと共に審査員席へと運ばれた。

大学卒業後にオーストラリアで生活していたという「CAFE PDC」の藤倉正法さんは、英語で自己紹介をした後、「ここで優勝して世界大会に出場することがあれば、英語で話さなければならないので、ロンドンでもできるということを示すためにイントロダクションだけ英語でやらせてもらいました」と優勝への意気込みを語った。
カクテルの題材として選んだのは、ウディ・アレン監督の映画「マッチポイント」。元プロテニスプレーヤーのクリスが、友人のフィアンセであるアメリカ人女優のノラに心を奪われていく作品だ。この作品をセレクトした理由について、藤倉さんは「ノラが白い衣装をまとい"ホワイトレディ"の様相で、クリスを"テンプテーション(誘惑)"する場面を、イギリス由来の『ホワイトレディ』と、アメリカ由来の『テンプテーション』という2つのカクテルをクロスオーバーさせることで表現しようと考えました」と説明。カクテル名は、「English Temptation」と名付けられた。
材料には、「恋するハーブ」とも呼ばれているヴァーベナをインフュージョンした「ヘルメス ホワイトキュラソー」や、かつて媚薬として使われていたというキャラウェイビターズなど、誘惑性の高い素材を使用。総容量を100mlと多めにすることで、より酔いやすいカクテルに仕上げた。
続いては、「赤玉スイートワイン」にローズウォーターが加えられたフォームを作り、カクテルとは別のグラスに注ぐ。グラスをセパレートにした意図は、「フォームを先にお口に含んでいただいて、ローズの香りを鼻の中に残しながらカクテルを飲むことで、2つの香りが組み合わさります。ローズの誘惑を受けて、"ホワイトレディ"に見えるカクテルを飲むと、そこにはテンプテーションの要素も入っていて、交互に飲み進めていくうちに誘惑に負けてしまうことでしょう」と語られた。

6番目に登場したのは、「PAVILION」の杉浦聡さん。ステージにはクリスマスツリーやサンタクロースの帽子が飾り付けられ、華やかな雰囲気に。クリスマスのロンドンを舞台にした映画「ラブ・アクチュアリー」からインスピレーションを受けたというカクテルは「Love Is All Around」と題された。
同映画では、秘書に恋をした英国首相や、弟に恋人を奪われてしまった作家、妻子持ちの会社経営者など、19人もの男女の恋愛が描かれている。杉浦さんは、同じ学校の女の子に恋をする少年の甘酸っぱい初恋の味を表現するためにフレッシュレモンジュースを、恋する息子を見守る父親の包容力を表現するために卵白を使用するなど、映画の内容に忠実なレシピを考案。シェイカーの音をクリスマスの夜を彩るジングルベルに見立てて、優しい色合いのカクテルを作り上げた。
「恋は甘いだけでは上手くいきません。長く続けば続くほど、少しの刺激が必要になるものだと、まだまだ恋に未熟な私は『ラブ・アクチュアリー』に教えてもらいました」と語る杉浦さんは、最後に炭酸水を追加。赤いリボンのついたボックスの中にカクテルを丁寧に収め、プレゼントを渡すように審査員に提供した。

「アンダーズ東京 ルーフトップバー」の吉原泰俊さんは、1999年に公開された映画「ノッティングヒルの恋人」を題材に、「surreal but nice」というカクテルを創作。ロンドンで暮らす平凡な男・ウィリアムと、アメリカの大女優・アナの恋物語をイメージして、イギリスのティー文化とアメリカを代表するフルーツ、クランベリーの融合を主題とした。
2人の恋は、ウィリアムがアナの服にオレンジジュースをかけてしまうところから始まる。ラブストーリーの始まりを告げるフレッシュオレンジジュースに、ウィリアムの母国を示すアールグレイシロップや、アナの母国を象徴するクランベリージャム、そしてカクテルの主役である「ビーフィーター24」を追加。離れ離れになった時期を経て愛を確かめ合った2人のように、それぞれの素材が二度と離れ離れにならないよう、力強いシェイクで愛に満ち溢れた一杯を完成させた。

8番目の出番となった「BAR 猫又屋」の新井洋史さんは、ツイードのベストにシルクハットという特徴的なファッションで登場。映画「シャーロック・ホームズ」を題材に、自らが名探偵シャーロック・ホームズに扮し、「もしも宿敵ブラックウッド卿が"蘇りの秘薬"を完成させていたとしたら?」というストーリーでショー形式のプレゼンテーションを披露した。
「ビーフィーター24」の優れた点として、「独創的な味わい」と「副材料との相性の良さ」という2点を挙げた新井さんは、「映画で喩えるならば、主役もこなしつつ、名脇役もできる。そんなジンなのではないでしょうか」と表現。バタフライピーやマカ、甜杏仁などから作った自家製クリスタルリキュールと共に、カラフェに注いだ。これにライムジュースを加えると、液体の色が青色から紫に変化。まさしく魔術のような変化に会場からは驚きの声が上がった。
「ヨーロッパでは古くからエリクサー、つまりは万能薬の開発がなされていました。そして、数少ないエリクサーの冠を持つのが、『シャルトリューズ ヴェール』。ブラックウッド卿の耳にも間違いなく届いていたはずです」という説明に続いて、シェイカーに「シャルトリューズ ヴェール」を加える。細やかなシェイクを経て、怪しげな美しさを放つ紫色のカクテル「フェニックス24」が完成した。
「至高のカクテルは、グラスも至高でなくてはいけません」という考えから、容器には1950年代のヨーロッパで作られたアンティークのグラスを使用。最後は、「このカクテルで皆様の命が永遠になってしまっても、その責任は負えませんのでお許しください」と、ユーモアたっぷりに試技を締めくくった。

拮抗した戦いを制し、世界大会への切符を手にした日本代表のバーテンダー

8名のファイナリストの試技が終わると、審査員は協議に入り、その間、会場では「ビーフィーター24」を使用したジントニックやフィンガーフードが振る舞われた。
この日は、特別ゲストとして、2014年の「ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション」で日本代表に選出された大竹直哉さんも登場。先ほどまで熱戦が繰り広げられていたステージで、映画「ヴィクトリア女王 世紀の愛」をモチーフにした「Majesty #8」というカクテルが創作され、来場者の目と舌を魅了した。

楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、いよいよ「ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション」は審査結果発表の時を迎える。プレゼンターは、「ビーフィーター」のマスター・ディスティラーであるデズモンド・ペイン氏。「第6回目の『ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション』の受賞者を発表します」という宣言からしばしの間を空け、デズモンド氏の口からは藤倉正法さんの名前が発表された。
優勝を果たした藤倉さんには、2017年2月に行われる「ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション」の世界大会への出場権利とトロフィー、そして記念品として「ビーフィーター」特製の旅行トランクが贈られた。
デズモンド氏は、今大会を「日本はバーテンディングと、カクテルを作るということに対して、本当にクオリティが高い国です。非常に高いレベルでクオリティが拮抗しているので、非常にジャッジが難しくなっています」と総評。その上で、藤倉さんの選出理由については「まずカクテルがジンである良さと、カクテル自体の良さを兼ね備えていなければなりません。バランスが大事です。それと、映画から、どのようなインスパイアを受けて、どのような表現をしているかというのが非常に重要な審査の項目でした。藤倉さんの作品は、ジンの味わいが活かされていて、とても美味しいカクテルでした。スターはカクテル自身でなければいけないということを、きちっと審査させていただきました」と語った。
一方の藤倉さんは、「この度は、このように素晴らしい賞をいただきまして非常に嬉しく思っています。まだまだバーテンダーとして未熟な部分があり、カクテルが評価されたというだけであって、本当に勉強をしなければならないところがあると思っています。このカクテルに負けないようなバーテンダーになれるよう、私自身頑張っていこうと思います」と述べ、「世界大会は2月にあるので、そちらでも良い結果が出せるように頑張っていきたいと思います」と世界大会への意気込みを語った。

審査結果発表の後には懇親会が行われ、8人のファイナリストから来場者に出場作品のカクテルが提供された。
壁は、「ビーフィーター24」のシンボルカラーでもある赤いライトに照らされ、客席には重厚感のある革張りのソファーが並ぶ。ジャジーなBGMが流れる会場は、さながらバーのような雰囲気となり、賑やかな会話や笑い声が飛び交った。戦いを終えたファイナリスト達も一様にリラックスした表情で、来場者との会話を楽しんでいた。

文・阿部光平

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