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【セミナー/イベントレポート】継承される匠の技と個性豊かな和素材との融合によって誕生したジャパニーズクラフトスピリッツ・リキュール

「日本人の味覚に合う洋酒づくり」から始まったオリジナリティ溢れるジャパニーズクラフトスピリッツ・リキュール

サントリーが洋酒をつくり続けてきた100年の歴史

「日本人の味覚に合う洋酒をつくり、日本に洋酒文化を切り拓きたい」
そんな想いからサントリーの創業者・鳥井信治郎が大阪工場を設立したのが1919年のこと。1936年にはサントリー初のジン製品『ヘルメス ドライジン』、1947年には初のリキュール製品『ヘルメス ペパーミント』、1956年には初のウオツカ製品『ヘルメス ウオツカ』と、これまでに数多くのスピリッツやリキュールを世に送り出してきた。
日本に洋酒文化を広めるためにサントリーが挑戦してきたのは、商品の発売だけに留まらない。日本初のカクテルコンクールの開催や、百貨店でのカクテル教室、洋酒のある生活を提案するホームバーセットの販売など、多方面から洋酒文化の普及に尽力してきた。
鳥井信治郎が大阪工場を設立してから、今年で100年。「日本人の味覚に合う洋酒をつくる」という創業者の想いは、伝統的な手しごとや匠の技術と共に受け継がれ、今もなお新しいスピリッツやリキュールを生み出している。2017年にはジャパニーズクラフトジン『ROKU』、2019年4月にはジャパニーズクラフトウオツカ『HAKU』、そして同年6月にはジャパニーズクラフトリキュール『奏 kanade』が発売。世界からも大きな注目を集めている。
100年にわたるサントリーのスピリッツ・リキュールづくりは、どのような道を歩んできたのか。その歴史を振り返り、そしてさらに進化したジャパニーズクラフトスピリッツ・リキュールと、それらを使用したジャパニーズクラフトカクテルのセミナーが開催された。

伝統を守りつつ、日本らしさを盛り込んだジャパニーズクラフトジン『ROKU』

1936年に『ヘルメス ドライジン』が発売されて以降、80年以上の歴史を誇るサントリーのジン製品。その最新作となる『ROKU』は、ジャパニーズクラフトジンの代名詞として世界30カ国以上で販売されている。
ジャパニーズクラフトという言葉の意味について、サントリースピリッツ株式会社のシニアスペシャリスト・鳥井和之氏は「日本らしい素材の個性を最大限に引き出し、それを組み合わせてひとつの商品をつくること」だと語る。その言葉通り、ジャパニーズクラフトジンという名称を冠する『ROKU』には、トラディショナルな8種のボタニカル(ジュニパーベリー、コリアンダーシード、アンジェリカルート、アンジェリカシード、カルダモンシード、シナモン、ビターオレンジピール、レモンピール)に加え、日本の自然が育んだ6つのボタニカル(桜花、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子)が使用されている。
大阪工場のスピリッツ・リキュール工房には形状や材質の異なる4基の蒸溜器があり、14種のボタニカルはそれぞれの個性を引き出すために最適な方法で蒸溜される。例えば、桜花は咲いた状態のものを手摘みして、生のまま浸漬。数週間漬け込んだ後に蒸溜することで、華やかな香りの原料酒ができあがる。素材によって最適な蒸溜方法を使い分けるという繊細な作業は、長年サントリーが培ってきた技術があるからこその仕事だ。
今回のセミナーでは、桜花の原料酒と完成した『ROKU』のテイスティングが行われた。桜花の原料酒は、桜餅のような甘い香りと味わいが特徴。他の原料酒とブレンドした『ROKU』は、最初に桜や柚子の香味が立ち、続いて煎茶と玉露の優しい甘味が広がり、最後にキレのある山椒が残るという複雑で重層的な味わいが印象的だった。

米からつくられた繊細でクリーンなジャパニーズクラフトウオツカ『HAKU』

次に紹介されたのは、100%国産米を使用し、独自の竹炭濾過で磨き上げられたジャパニーズクラフトウオツカ『HAKU』。原料である「白米」と、汚れない輝きを意味する「純白」から名前がつけられた、クリーンでスムース、そしてほのかに甘いウオツカだ。
ラベルには日本の伝統を感じさせる純白の和紙が用いられ、緩やかな曲線を描くボトルのデザインは清流のきらめきを表現。ミニマルかつモダンな日本らしいデザインになっている。
『HAKU』の特徴について、鳥井氏は「通常、ウオツカをつくる際には、トウモロコシや大麦などの原材料を糖化させるために麦芽や酵素を使います。しかし、『HAKU』では米麹を使用しています。そうすることで米由来のほのかな甘味と豊かな香りを引き出し、麦芽とは違った複雑なニュアンスを表現しました」と説明。一次蒸溜したライススピリッツを、「米のほのかな甘味と柔らかな口当たり」が特徴の原料酒と、「クリーンでクリアな味わい」を特徴とする原料酒につくり分け、それらを丁寧にブレンドするという独自の製法でつくられている。
『HAKU』の原料酒は、フルーティな日本酒のような味わい。これを竹炭を用いた濾過で不純物や雑味を取り除くと、スムースな口当たりで、ミキサビリティの高いウオツカが完成する。実際に飲んでみると、国産米由来の優しく華やかな香りと、米の自然な甘さが口の中にスーッと広がり、雑味のないすっきりした余韻が感じられた。

素材の特徴を最大限に引き出したジャパニーズクラフトリキュール『奏 kanade』

最後に登場したのは、これまで大阪工場が培ってきた浸漬や蒸溜の技術を駆使し、日本の果実や茶葉の個性を抽出することでつくられたジャパニーズクラフトリキュール『奏 kanade』。和柑橘を代表する柚子、日本を代表するお茶の産地・京都宇治産の抹茶、芳醇な香りとみずみずしい果実感が楽しめる白桃という3つのラインナップで2019年6月に料飲店先行発売される。
『奏 kanade』をつくる上でこだわったポイントとして、鳥井氏は「厳選した国産素材を使用」、「素材の個性を最大限に引き立てる伝統的な抽出方法(浸漬・蒸溜)」、「創業以来、継承される匠の技により多彩な原料酒をブレンド」という3点を挙げた。これによって、圧倒的な素材感や、厚み・伸び・余韻のある味わいを実現したという。
「素材の中には苦味や甘味や、渋みなど、様々な成分があります。それらを引き出すためには、皮の部分から抽出したり、中身だけを浸漬したりというように、素材によって抽出方法を変え、最後にブレンドすることで新鮮で自然な味わいに仕上げています」
こうして完成した『奏 kanade』。柚子は、果実と果皮それぞれの個性を抽出した3つの原料酒と果汁をブレンドし、爽やかな香りとほのかな苦味が感じられる繊細な味わいに仕上がり、抹茶は、石臼で挽いて粉状で浸漬したものと、袋詰めして手作業で浸漬した玉露の原料酒により、深いコクと豊かな余韻が味わえるリキュールになっている。白桃は、丸ごと漬け込んだ浸漬酒と果汁をブレンドすることによって、果実にかぶりついたようなみずみずしさと芳醇な香りを実現した。
鳥井氏が「100年以上に渡ってサントリーがつくってきたリキュールの集大成」と語るように、匠の卓越した技術と個性豊かな和素材との融合によって誕生した「ジャパニーズクラフトリキュール」と呼ぶに相応しいお酒と言えるだろう。

サントリーカクテルアワード受賞者が提案する至高のジャパニーズクラフトカクテル

鳥井氏によるセミナーに続いては、「サントリーカクテルアワード2018」を受賞した澁谷暁典氏(BARエルロン)によるジャパニーズクラフトカクテルのデモンストレーションが行われた。
最初に披露されたのは『ROKU』と『奏 kanade』の白桃を組み合わせたカクテル。柑橘系との相性がいい『ROKU』に生搾りのレモンジュースを合わせ、『奏 kanade』の白桃とトマトジュースを組み合わせることでフルーツトマトのような果実感を表現する。空気をたくさん含ませて口当たりをよくするためにゆったりとシェーカーを振り、赤シソと塩をまぶしたグラスに注いでハーフスノースタイルで仕上げた。カクテル名は花篝(はなかがり)。日没後、篝火(かがりび)に照らされて赤く光る花を表現した。

2つめのカクテルは、『HAKU』と『奏 kanade』の抹茶を組み合わせた1杯。国産米と抹茶という純和風な素材に、生クリームを合わせてデザート系のカクテルに仕上げる。甘味とコクを出すために沖縄産黒糖の『わつなぎ』を、全体のアクセントとしてあられを加えた。シェーカーから注がれたのは、見るからにクリーミーな淡い緑色のカクテル。最後に黒豆の甘納豆が添えられたショートカクテルは、八十八夜と名付けられた。

イベント終了後には、澁谷氏が創作した2種のカクテルに加え、『ROKU』と『奏 kanade』の柚子でつくられたジントニックが振る舞われた。ジャパニーズクラフトスピリッツ・リキュールの歴史や特色を踏まえた上で、カクテルを味わうという実践的なセミナーに、参加者の表情からは充実感が伺えた。

取材・文/阿部光平

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