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【セミナー/イベントレポート】世界大会の出場権をかけた「2017 ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション 日本ファイナル」

"自分に馴染みのある「街」"を表現した個性豊かな8種のオリジナルカクテル

世界に挑むバーテンダーを選出する白熱の日本代表選考会

今年で7回目の開催を迎えた「ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション」。
本年度の大会テーマは「YOUR CITY MIXED WITH LONDON」。ベースに「ビーフィーター」もしくは「ビーフィーター24」を使用し、"自分に馴染みのある「街」"を表現したオリジナルカクテルで腕を競う。カクテルの見栄えや味わいはもちろんのこと、創作意図やビーフィーターへの理解なども審査の対象になるため、技術のみならずバーテンダーとしての素質が問われることになる。
日本ファイナルには、書類審査を勝ち抜いた8名のバーテンダーが出場。審査員としてビーフィーターのマスターディスティラーであるデズモンド・ペイン氏と、グローバルブランドアンバサダーのスマイヤー・コノリー氏が来日した。
開会にあたり、サントリーアライド株式会社 取締役副社長の尾崎大輔氏は、「ボトルデザインが色鮮やかな赤に一新された『ビーフィーター24』と同様に、今日の大会も華やかに盛り上げていきたいと思います」と挨拶。2018年2月にロンドンで開催される世界大会への出場権をかけた熱い戦いが幕を開けた。

国内トップレベルのバーデンダーが魅せる洗練された技術とアイディアの共演

くじ引きで決められた出場順に従い、トップバッターとして登場したのは「THE RITZ-CARLTON KYOTO THE BAR」に勤める浅野陽亮さん。2年連続でのファイナル出場ということもあり、落ち着いた表情で試技をスタートさせた。
浅野さんがテーマに選んだのは、ご自身の生まれ故郷である京都。プレゼンテーションの冒頭では、「京都はビーフィーターの生まれ故郷であるロンドンと同じく、古き伝統が今なお息づき、毎年世界中から多くの人が訪れる世界有数の観光地です。そんな京都を訪れる旅人たちへ、本日は私から心のこもった"おもてなしの一杯"をお届けいたします」と語った。
最初に登場したのは、抹茶をたてる際に使用される茶碗。これに「ビーフィーター24」と煎茶を注いで茶筅(ちゃせん)で混ぜ合わせるという、日本古来のおもてなしの作法である茶道のスタイルでカクテルを創作していく。副材料として加えられた日本酒には、イギリスで古くから親しまれているカモミールが漬け込まれており、旅人の心と体を癒すリラックス効果を持たせたという。さらに、ロンドンでは古くからおもてなしの象徴とされてきたパイナップルのシロップを加えることで、京都とロンドンのおもてなし文化を融合。「心のこもったおもてなし」という意味を込めて、「Genuine Care」と名付けられたカクテルが完成した。

2番目に登場した「EL CALVADOR」の渡辺高弘さんは、生まれ育った街であり、今もバーテンダーとして活躍している東京をテーマに設定。世界中から様々な人や物が集まり、それらを独自の文化として昇華させる東京をイメージして、様々な国の素材を1杯のカクテルに集約させるという創作意図をプレゼンテーションした。
使用する材料は、ロンドンの「ビーフィーター24」、フランス発祥のコーンポタージュ、カリブ海のラムがベースのココナッツリキュール「マリブ」、そしてアジアで広く親しまれている豆乳。これらを氷と共にシェイクし、最後に和の要素を付加するために南天の葉を飾ってユニークな一杯を完成させた。
カクテル名は、英語で「仕立てる」を意味する「bespoke」と、ビーフィーターの「BEE」を組み合わせた「BEE-SPOKE」。世界各地の素材を一杯のカクテルに仕立て上げるという日本らしい巧みな技術を披露した。

「BUTLER GINZA BRANCH」の水岸直也さんは、流暢な英語でプレゼンテーションを開始。地元・横須賀市をテーマに、ローカルグルメとして知られる横須賀海軍カレーをイメージしたカクテルを創作した。
水岸さんによると、横須賀海軍カレーは、大日本帝國海軍を襲った流行病に対して、軍医たちが当時同盟関係にあったイギリス海軍に習って採用した栄養食が起源だという。このストーリーが、1890年頃にイギリス軍医によって考案されたクラシックカクテル・ギムレットと重なることからインスピレーションを受け、「T.G.I.F. Gimblet」と名付けたオリジナルカクテルを作り上げた。
このカクテルは、カレーライスにならい"ソース"と"ライス"という2つのパートに分かれている。ソースパートには、マンゴーのピューレとシトラスピールをベースにターメリック、ローリエ、カイエンペッパー、マスタードシードなどを加えたインディアンシトラスケチャップと、スパイシーでハーバルな香りが特徴の「シャルトリューズ・ジョーヌ」を使用。ライスパートは、炒った玄米にグラニュー糖やカルダモン、コリアンダーシードなどを加えたスパイスドミルクコーディアルに、「ビーフィーター」やディスティルドカレープラントウォーターなどを加え、乳白色のカクテルに仕上げた。「ライスとソースの混ぜ具合を変えることで、甘みや酸味、アルコール度数などを、好みに合わせて調整することができます」と説明されたように、自由度の高いカクテルとなった。

続いてステージに上がった「Bar 霞町 嵐」の竹田英和さんは、バーテンダーになる前は料理人だったという経歴の持ち主。故郷である埼玉県北川辺町の特産品をふんだんに使い、味わい豊かなカクテルを提案した。
カクテル名の「RIPA」とは、ラテン語で「川のほとり」を意味する言葉で、イギリスを代表する運河であるテムズ川の流域で発展したロンドンと、日本最大の流域面積を誇る利根川が流れる北川辺町をイメージしたネーミングとなっている。
レシピはテムズ川のほとりで作られるシトラスの香りが特徴的な「ビーフィーター24」に、竹田さんの実家でとれたというコシヒカリを漬け込んだドライヴェルモットや、北川辺産のトマトジュース、街の木として登録されている梅のシロップなどを加えてシェイク。コースターには、砂や石でテムズ川と利根川を表現する枯山水の様式を取り入れるなど、素材のみならず見た目の面でも「川のほとり」という題材を追求した。

5番目に登場した杉浦聡さんは、中目黒にあるレストラン「PAVILION」でヘッドバーテンダーを務める実力者。今回は地元・名古屋をテーマに、煌びやかでゴージャスな一杯を創作した。
杉浦さんは、ロンドン塔を守る近衛兵のことを指すビーフィーターになぞらえて、名古屋城のシンボルである金の鯱(しゃちほこ)を"名古屋城を守るビーフィーター"と表現。ゴールドラッシュ時代のアメリカで、金の採掘のお祝いに飲まれていたというマルティネスをモダンツイストしたオリジナルカクテルは、「Golden Grampus」と命名された。
英語でプレゼンテーションをスタートさせた杉浦さんは、写真を交えながら名古屋城の歴史や、地元で親しまれている小豆、八丁味噌などの食材を紹介。続いて、「ビーフィーター24」とソーテルヌ、小豆とみつ豆のオリジナルパンチをミキシンググラスに注いで丁寧にステアした。マリーゴールドを入れた「茶こし」を使ってグラスに注いだ後、自家製の八丁味噌ビターズを加え、最後に上から金箔を振りかけると、金色に輝く華やかなカクテルが完成した。

「私が生まれて初めてジンを飲んだのは、今から17年前の20歳のとき。そのとき飲んだ思い出のジンこそがビーフィーターでした。それから4年間、私はビーフィーター以外のジンを知らずに過ごしてきました。それほどビーフィーターは有名であり、その街はとても田舎でした」という印象的なスピーチからプレゼンテーションを始めた「BAR万(YOROZU)」の吉富万洋さん。ビーフィーターと出会い、バーテンダーになるきっかけとなった街・鹿児島県霧島市をテーマにしたカクテルは、「Copse Reviver 24」と題された。
このカクテルは、ジンのスタンダードカクテルであるコープス・リバイバーNo.2をツイストした一杯。「Copse」とは、雑木林や小さな森を示す言葉であることから、1820年の創業以来、変わらぬ伝統や製法を引き継ぐ「ビーフィーター24」を木の根幹に、ローズマリーやレモングラスが漬け込まれたグリーンノート・フィノ・シェリーを青葉に見立てて、樹木になぞらえたカクテルを創作した。
その名が示す通り、霧島は"霧の街"であることから、最後に特産品である霧島茶を漬け込んだアブサンをカクテルにミスト。霧に包まれた森の香りをカップの中に閉じ込めた。

「アンダーズ東京 ルーフトップバー」の吉原泰俊さんは、ご自身が暮らす千葉県流山市をテーマに設定。特産品である白味醂(みりん)を使用し、同地にゆかりのある詩人・小林一茶のイメージを反映させたオリジナルカクテルを創作した。
吉原さんは、今回のカクテルの創作意図について「流山は白味醂(みりん)発祥の地。その醸造所の創設者である双樹は詩人でもあったため、小林一茶と深い親交がありました。双樹と一茶が詩で繋がったように、ロンドンのジンと流山の白味醂(みりん)が茶で繋がってほしいという想いを込めました」と説明。煎茶のボタニカルが使用されている「ビーフィーター24」に、小林一茶をイメージした抹茶、そして千葉県産のさつま芋と本味醂(みりん)のリダクションなどを加えて、氷と共に力強くシェイクした。
プレゼンテーションの最後には手元から炎を放ち、月が描かれた扇子を出現させる手品を披露。「名月を とってくれろと 泣く子かな」という小林一茶の名句を詠みあげて、パフォーマンスを締めくくった。

「SMOKE BAR & GRILL」のフロアマネージャーを務める谷岡敬道さんは、お店がある表参道をテーマに据え、その先に鎮座する明治神宮をイメージしたカクテル、その名も「GINGU」を考案。「ビーフィーター」に合わせるメインの素材には、古式農法で作られ、参拝記念茶として販売されている焙じ番茶を選んだ。
まずは、明治神宮の社紋にもなっている菊の花を漬け込んだ「ビーフィーター」に、かつては薬として飲まれていたという焙じ番茶やサトウキビのシロップをミックス。甘みを引き締めるためのマルガリータソルトを加えてから、リズミカルにシェイクした。東京オリンピックのエンブレムをイメージしたという藍色の盃にカクテルを注ぎ、最後に菊の花を一輪浮かばせると、鮮やかなコントラストの一杯が仕上がった。

激戦を勝ち抜いた日本代表のバーデンダーとカクテルが決定!

ファイナリスト8名のパフォーマンスが終わると、審査員は審議のために別室へ移動。審議の間、ステージ上には「ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション2014」の日本代表である大竹直哉さん、「同2015」の日本代表である五十嵐愛さん、「同2016」の日本代表である藤倉正法さんという3人の歴代日本チャンピオンが登場し、この日のために創作したオリジナルカクテルを振る舞った。
先ほどまで試技を行っていたファイナリストたちも会場に現れ、来場者たちと話を交わすなど、一様にリラックスした表情を浮かべていた。

数十分に渡る審議の後、遂に「2017 ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション 日本ファイナル」の結果発表の時を迎える。
審査にあたったデズモンド・ペイン氏は、「はじめに8名のファイナリストの皆様、本当におめでとうございました」と、ここまでの健闘を祝福。その上で、「このような場で審査をさせていただくのは、毎年とても難しくなっています。というのも、毎年レベルがどんどん上がっているからです。これまで長い間、様々なカクテルを審査させていただいていますが、日本人の方が作るカクテルというのは、まず見た目が素晴らしいということで、本当にリスペクトしております。ただし、見た目よりももっと大切なのは、美味しさ。今日、試飲させてもらったカクテルはどれも本当に美味しかったです。ありがとうございます」と語った。
大会の総評が終わると、会場にドラムロールの音が鳴り響く。ペイン氏が「The winner is」と声高らかに述べ、一瞬の静寂の後、「サトシ スギウラ」と名前が読み上げられた。自分の名前が呼ばれた杉浦さんは、驚いたような表情を浮かべた後、力強くガッツポーズ。大歓声を浴びながら、喜びを噛み締めるように笑顔を見せた。

優勝のコメントを求められた杉浦さんは、「大変光栄な場で優勝できて非常に嬉しいです。ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティションは、僕がはじめてエントリーした思い出深い大会で、いつかこの大会で優勝したいと思って、毎年チャレンジしてきました。今回、4回目の挑戦で、はじめて優勝できたのはとても嬉しいです。尊敬する偉大な先輩たちと一緒に大会に並べて勝てたので、日本人初の世界大会1位を目指して頑張ってきたいと思います。頑張ります!ありがとうございます!」とスピーチ。共に腕を競い合ったファイナリストたちから祝福の言葉をかけられ、肩を叩かれて激励されている様子は、ライバルからも愛される杉浦さんの人柄を表しているようだった。
杉浦さんには盾と記念品のほか、2018年2月にロンドンで開催される世界大会への出場権が与えられた。7度目の開催にして、日本人初の世界大会優勝が期待される。

取材・文/阿部光平

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